Bonobo - Flashlight EP

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  • Bonoboのレコードはある程度、安心感がある。そして音楽的にもコンセプト的にもSimon Green(Bonobo)は対立することのないアイデアを押し進めている存在だ。ドリーミーな雰囲気と見事に形成されたハウスとヒップホップのビートによる彼のEP「Flashlight」を聞けばきっと楽しいと感じると思う。しかし注意して本作を探ってみると、実は今回収録された3つのトラックは何とかトラックとして体を成しているだけで、力強さが無く方向性が定まっていないことが分かる。 Gold Pandaの特徴でもある光り輝くビート・ミュージックの魅力を取り入れたリード・ソング"Flashlight"は、その中でもまだ好意的に受け止められるトラックだが、それはなぜならサンプリングしたベース音が必要最低限のバウンス感を与えており、平坦なダンス・トラックになることを防いでいるからだ。回転しながらゆっくりと上昇と下降を繰り返すアルペジオ、何となく立ち上がっては消えていくリード・シンセ、そこらじゅうに漂う柔らかなリバーブの膨張と収縮など、フィーチャーされている音素材はかつて無いほど弱々しく、全て構造と展開を成しているように見えているだけだし、"Pelican"と"Return To Air"は根本的には同じトラックだが、唯一異なるのはのんびりとしたムードを出すために使われている実際のサウンドとパターンくらい。本作にはアイデアというものがほとんど含まれておらず、SoundCloudやBandcampの至るところで聞くことが出来るサウンドばかりだ。
  • Tracklist
      A1 Flashlight B1 Pelican B2 Return To Air
RA