Prequel - Polite Strangers EP

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  • まず言いたいのはRhythm Sectionのレーベル部門は厳密に言えばローカルに焦点を当てているということだ。Al Dobson Jrによる『Rye Lane Volume One』は彼が住む場所でもあり、Rhythm Sectionのパーティーが行われている場所でもあるペッカムの通りにちなんで名づけられている。しかし、レーベルの名前には「international」という言葉が使われているとおり、レーベル設立者であるBradley Zeroは2枚目となるリリースでその名前に従ったタイトルを発表した。「Polite Strangers」のリリースにあたってZeroは地球儀の裏側に目をつけた。それがメルボルンの新人Prequelだ。本作が示しているとおり、物理的な距離というものは全く問題となっていない。きらきらとしたジャズ・サンプルと繊細なパーカッションをふんだんに取り込んだ3つのディープ・ハウス作品はクラブCanavanのダンス・フロアでこそ気持ちよく響くに違いない。 とはいえ、収録曲はビークタイムに向いているわけではない。重く覆われたグルーヴは互いの存在を喜び合う人だけが残っている時間、つまりパーティー終了直前(そしてその直後)の場面に向いていそうだ。"Searching"では、トークボックスのボーカルによるしゃっくりのようにほっそりとしたサウンドがテンポからズレながらぼんやりと漂う中、トラックは気だるく波打っている。このトラックが包括しているのは怠惰な感覚だ。後半になって行く当てもなくぼーっとしていても、この感覚は決して不快ではない。枕のように柔らかいローズのサンプルを用いた"Fidelio"はより焦点が定まっており、だからこそ素晴らしく仕上がっている。際立っているのは"Michelle"だ。それは異常に速いペースだからだけではない。よくありがちな土着的な展開ではなく、ドリーミーな上昇感を取り入れており、本作で最も超越的な1曲になっているからだ。対照的に不協和な素材を身に纏い這うように進むビートダウン・トラック"The Test Dream"は怠惰さが悪い方向で表れているように感じる。
  • Tracklist
      A1 Searching A2 Fidelio B1 Michelle B2 The Test Dream
RA