Scott Walker + Sunn O))) - Soused

  • Share
  • Sunn O)))とScott Walkerによる『Soused』は2人から届いた不屈の提案だ。ここまでくるとコミカルですらある。かたや陰気なドゥーム・メタル・バンドとして、その活動初期に10分間をたった1つのコードのフィードバックのみで成り立たせた作品を発表した存在であり、かたや1960年代の元ポップ・スターからJacques Brelの影響下にあるアート・ポップの舞台に転向し今日の姿(疫病と破壊について歌う美しく震える声を持つ男)へと完全に変化した存在だ。Walkerに至っては精肉を叩いたり、鞭を鳴らすためにパーカッション奏者を雇いながら何十年にも渡って数々のアルバムを制作している。今回、この2人が一緒になることは実に素晴らしく実に狂っている出来事なのだ。 実は今回のコラボレーションが上手くいっていることを認めるには少し心が痛む。コラボレーションをするにあたって目標を高く設定し過ぎてしまい、結果、上手くいかないと最初、直観的に思っていたからだ。1曲目の"Brando"ではWalkerによる最初の歌詞に被さるようにGuns N' Rosesの安っぽいアンセム"Sweet Child O' Mine"に似たリード・ギターが用いられている。一瞬ではあるがギターで恰好を付けることをSunn O)))はこれまで一度もやったことは無かったし、Walkerの出だしもミズーリ川を引き合いに出してはいるが文脈が無くメッセージが不明瞭だ。しかし、より馴染みのあるサウンドになっていくにつれ、Greg AndersonとStephen O'Malleyの2人がバック・バンドとして援護射撃を行っていることに気付くだろう。本作の裏話を考慮すればそれも当然だ。Sunn O)))が最初にWalkerにコラボレーションを依頼したのは、2009年の作品『Monoliths & Dimensions』だった。コラボレーションは叶なかったものの、今度は逆にWalkerがSunn O)))に依頼し、Walkerが前述の2人と構想していた一連の楽曲に対して一緒に作業が出来ないか尋ねたのであった。バック・バンドとして2人はWalkerの漆黒のメロドラマにも恐れることなくマッチしている。 "Herod 2014"では、幼児殺害に関する聖書の物語を聞くことが出来る。2人のメタル芸術家はアヴァンホーン・アレンジメントによってModel Tアンプ並に聞き心地が良く、赤ん坊の叫び声を模した無気力なブラスを用いている。さらに印象的なのはシンセを担当したPeter Walshによる無調なテクスチャーを生みだす能力で、カラスの殺害シーンのようなサウンドになっているところだ。本作で最もメタルな作品となっているのが"Bull"だ。病的な童謡を叫ぶWalkerからスタートし、シアトルのドゥーム商人2人が掻き鳴らすコードによる素晴らしい5分間を経て終了する。 Sunn O)))はMalefic(棺の中で"Báthory Erzsébet"のボーカルを録音したことがある)のようなブラック・メタルのシンガーと一緒にコラボレーションやツアーをしてきているが、人間の腐敗的な深みを最も楽しそうに図っているのは71歳のWalkerに見える。ドキュメンタリー作品の傑作『30th Century Man』にて、Walkerは「俺の人生は酷い夢を見るばかりだった」と語りながら何十年にも渡って歌詞の捉え方に変化が起こっていることを説明しようとしている。『Soused』で彼がやっているのは、黙示録のように語り「縫い合わせた死体」と「ただれた皮膚の膿」を呼び覚ますことだ。本作はまさに悪夢の成せる仕業なのだ。
  • Tracklist
      01. Brando 02. Bull 03. Herod 2014 04. Fetish 05. Lullaby
RA