Function : Vatican Shadow - Games Have Rules

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  • 壮大なサウンドに傾倒するFunctionとVatican Shadowがスタジオで一緒になると聞いたら、さらに巨大な鳴りの音楽性を取り入れるのでは、と考えることだろう。彼らの最新コラボレーションLP『Games Have Rules』は確かにテクノに対する2人の特徴的なアプローチ、つまり、FunctionことDavid Sumnerによる広大なサウンド・デザインに対する嗜好性と、Vatican ShadowことDominick Fernowによる無駄無く魅入られる程に効果的な制作スタイルを融合している。しかし実践面では2人は互いを押すというよりも、引くという方法を取っており、彼らが生み出すアンビエンスは抑制し合う中で起こる予期せぬサウンドだと言えるだろう。SumnerとFernowは共に瞑想とも言えるクオリティを自身の音楽に取り入れてきたが、我々はサウンドに圧倒されることでその境地に辿り着く傾向にある。多くの場面ではキック・ドラムと標準的なテクノのテンポを取り除きながら、2人は我々を積み重なるスピーカーの照準に合わすのではなく、上空から混沌を眺めているような景色を見せてくれる。Functionの12インチで短音シンセとして使われているようなサウンドがここでは鼓動するパッドへとぼやかされ、Vatican Shadowの吹き荒れるノイズは今回、遠方で鳴り響くパルス音となっており、時折ミックスに立ち上がってくるテープ・ヒスが歪みを生み出す程度だ。 しかし、このことは我々が完全に喧騒から締め出されていることを意味している訳ではない。完璧に曲順を組まれた『Games Have Rules』はバルブを開放し、段階的にテンションを少しずつ取り込んでいるのだ。本作の中盤に収録され温かみを帯びている"A Year Has Passed"と"A Year Gone By"で、初めてハイハットが使用されている。ハイハットが刻まれる度に徐々にリバーブがかけられていくことで、希望に満ちたコードがより不気味でメロディアスな領域に押しやられている。このダークな転換は連鎖的な反応を持っているようだ。ゆっくりと旋回し眩暈を起こしそうな"Red Opium"に続く"Bejeweled Body"にてSumnerとFernowは遂にテクノの衝動を檻から解き放つ。きらめく高域と鼓動する低域、そしてフィルターで紙切れのように薄くなったアシッド・ベースの断片を浴びせ掛けることで、ひねり具合が完璧な音の壁を生みだしている。2人がコラボレーションすると初めて聞いた時、筆者が想像していたのはこのサウンドだ。 "Bejeweled Body"が本作で最も印象的なトラックであるのは明らかだ。SumnerとFernowが今回の作品に辿り着くために時間をかけてくれたことを嬉しく思う。『Games Have Rules』は彼らの最良作に一切劣ることなく各自の音楽性の中でもプロデューサーとして繊細な部分にあたる個性を見事に提示してみせている。
  • Tracklist
      01. Things Known 02. Things Unknown 03. The Nemesis Flower 04. A Year Has Passed 05. A Year Has Gone By 06. Red Opium 07. Bejeweled Body
RA