Austin Cesear - West Side

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  • Austin Cesearは数えるほどのリリースの中で多くの領域をカバーしてきた。これまで彼はダークなテクノ、ダビーなハウス、そしてアンビエント的なミュージック・コンクレートの間を行き来しているが、困難な様子は全く見せず新たな一面を見せるたびに的確な姿勢を詰め込んできた。6曲入りのミニLP『West Side』はPublic Informationから彼にとって2枚目となるリリースだが、彼の素晴らしいスタイルの道を妨げるようなことはほとんど無い。 1曲目"La Paloma"は重さを感じさせない絶妙に恍惚感のあるトラックで、フィルターやフランジャー、そしてフェイザーによるモジュレーションがリズミカルな模様を描いている。質感やグルーヴにおける細かな変化によって反復する要素が時間をかけて展開していくという、今日までのCesearの根本となっている魅力がこのトラックでも早速継続されている。ダンス・フロアで見つけられるアイデアが取り出され、何度も試された後、全く異なるものへと処理されている。ループが何度も繰り返され、次第にその形や音色を変えていく。 どのトラックも従来のような方法論で展開することはほとんどない一方で、Cesearの制作方法は確実に成長している。Opal Tapesからリリースしたスプリット盤での"Holly Street"のようなトラックで使われていたカセット・テープがスリップしたサウンドは、"Ain't It So (Necessary)"での不安定なフィルター・ワークの起源となったものかもしれないが、こうしたトラックはより綿密にデザインされている。その結果、彼がこれまで時折リリースしてきた作品のどのトラックと比べてもより中身がありディープなサウンドになっており、少ない要素で多くの効果を達成している。1曲目"La Paloma"に沿った内容の"Easy Bend"が今回のハイライトであることは明らかだ。2つのシンセによるメロディ、ハイハットと重いキック・ドラムという基本的な素材の組み合わせが一緒に捻じれ合い完璧なダブ作品を形成している。このトラックのスカスカなミニマリズムは殺伐としているが温かみがあり、Basic Channelがやってきたこととは全く異なるサウンドながら、彼らを彷彿とさせる。 最後の2曲で特に問題になっているのが、緊急性を増していくと少し面白みが無くなる点だ。"Samarada"はどこかに向かって走って行っているような感じがするが、終盤にかけてサイドチェインのかかったボーカルが入ってくると、あまり効果的ではない気がしてしまう。このトラックはそのポテンシャルを解き放つ重要作になっていたかもしれなかったのに、Cesearの精選されたアプローチが独自の個性を持ったものになりきれず、逆にトラックに何かが欠けている印象を残してしまっている。どこかに行こうと、もしくは、何かをしようと急いでいたりする印象ではなく、もっとゆったりとしたトラックの方がハイライトだ。そうしたトラックは果てしなく続いていくことが出来るだろう。
  • Tracklist
      01. La Paloma 02. Ain't It So (Necessary) 03. Cloven Hoov 04. Easy Bend 05. Samareda 06. Bee Free (Warlick Mix)
RA