Deer - String Theory

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  • Marionetteはトロントの新レーベルだ。その第1弾となるDeerはワイマールを拠点とするプロデューサーでこれまでに少数のリリースを果たしていが、その中にはGieglingから発表した2010年のEPが含まれている。どの曲も聞いたことがないかもしれないが、"Spooky Action At A Distance"の序盤のサウンドがゆっくりと溢れ出すと、意識を引きつけられることだろう。丹念なドラム・ヒット、単調なベースライン、ギター・フレットの摩擦音、その全てには感情がずっしりと乗っかっている。しかし決して感傷的に表現しているわけではない。Pantha Du Princeのようなこっそりと忍び寄ってくるミニマル・テクノは、ジャジーなコード進行によってあからさまではなく表面下において、慎重に色褪せていく嘆きと悲しみの物語へと花開いていく。Dwigによる"Evocational Remix"は若干ながら楽しさが増しており、オリジナル・バージョンでの巨大なメロディを、レジャー感のあるキーボード・サウンドに置き換えていて、よりアップビートな対比を成している。野外パーティーの早い時間にプレイするような感じのトラックだ。 Hirsch(Deerの本名)作品の最も鮮烈な要素と言えば彼自身によるアコースティック・ギターの演奏だが、"Holding On, Moving Up"ではそのギターが前面に押し出されている。リズミカルで肉体的なトラックがゴムのようなベースラインの上を擦りつけながら、今にも壊れていきそうなギターの周りに細かく弾けるパーカッシブなサウンドのフレームを構築している。同じくギターを用いた"Emerging Wildlife"が面白い。安っぽいヒップホップのトラックから拝借したようなブルージーなリフとディスコ・ストリングスがなかなかニクい演出をする1口サイズのブーンバップとなっているが、音色を掻き乱して本作に変化をつけるという意味ではそれほど上手いとは言えない。しかし、他3曲の高いクオリティーを考慮すれば、全く気にするほどのものではない。
  • Tracklist
      A1 Spooky Action At A Distance A2 Holding On, Moving Up B1 Spooky Action At A Distance (Dwig Evocational Remix) B2 Emerging Wildlife
RA