Tin Man - Ode

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  • LAを拠点とするAbusurd Recordingsの傘下レーベルAcid Testは、303サウンドの異なる一面を提示している。Recondite、Donato Dozzy、そしてTin Manの貢献により、303サウンドのイメージは、アシッド・ハウスのクリシェ化された熱狂性から、より巧妙なメランコリー性へと変化してきている。3人がこのサウンドの旗手であることは間違いない。しかし、10枚以上のリリースと、ほぼ完璧なアルバム2枚を経て、この悲しみに満ちたアシッド・サウンドはありきたりなものになろうとしていた。今作では、そうした孤独なサウンドは、より淡く強固になってきているTin Manの幅広い音楽性の一部分にしか過ぎないことが分かる。 Tin ManことJohannes Auvinenは、はためくダブ・コードによる"No New Violence"や、テクノ板金で出来た"Depleted Serotonin"といったトラックによって、慎重にリスナーをこうした変化に促している。以前は主にキックが彼の楽曲を支える柱として機能していたが、ここでのリズムはこれまでとは異なる角度に傾いている。パワフルに行進する"In Your System"や、静観な"Vertigo"といったトラックもあり、旋回するストリングとシンセが洗い流していく様は、灰色がかったDuskyの作品かのようだ。 『Ode』のCD盤にはボーカル・バージョン4曲も収録され、『Scared』や『Vienna Blue』の頃を彷彿とさせる。バウンシーなディープ・ハウス"What A Shame"では、突如、重く心地よい気だるさを帯び始め、一方"Memorophilia"や"No New Violence"では、Auvinenによる辛うじて聞こえるバリトン・ボイスが呟やかれている。こうした追加トラックはTin Manの2つの側面の間にあるギャップに橋を架けている。追加トラックがなければ、そのギャップは頑として埋まることはなかっただろう。さらに重要なのは、彼の声は楽曲の中心で感情を振るわせているのではなく、音素材の奥底に潜んでおり、ホーム・リスニングに適したサウンドであることだ。 バランスとシンセシスにおけるこうした感覚によって、『Ode』はAuvinenの作品の中で最も上手くまとめられたアルバムとなっている。特にボーカル・トラックのバージョンを聞いたときにそう感じるだろう。これにより、レイブ終了後の精神状態を生み出している。そしてそれは、同様のサウンドを探求しているLee Gambleが生み出す幻聴よりもダイレクトな方法だ。『Ode』はパーティーの要素である陶酔感と胸騒ぎの感覚を引き続き持ち続けていながら、内省的な性質を獲得しているのだ。
  • Tracklist
      01. No New Violence 02. In Your System 03. Depleted Serotonin 04. What A Shame 05. Vertigo 06. Memorphillia 07. Ode
RA