Prins Thomas - Rainbow Disco Club Vol.1

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  • Prins Thomasは00年代を通してコズミック・ディスコ・サウンドのキングとなったが、その地位は彼が望んで受け入れたものではない。Thomas Moen Hermansen(Prins Thomas)の初期作品の多くを特徴付けていた大げさなメロディ・センスや、煌びやかなアルペジオ、そして陽気なバカバカしさの背後で、彼はいくつかトリックを使っている。彼が今年の春にFull Puppから発表した最新アルバム『Prins Thomas III』は、ゆっくりとセッションした流れるようなクラウトロックの中をのんびりと進んでいたが、その収録曲のほとんどは、最も自由なマインドを持ったフロア、もしくは、疲れ切ったフロアにハマるもので、全体的に見てこの作品はクラブのニーズというよりも、ヘッドホンで至高の悦びにふけることに重点を置いていたのだ。 それでもやはり、彼はダンサブルなヤバいミックスを作る術を心得ている。多くの人から愛される東京のフェスティバル、Rainbow Disco Clubでのプレイにインスパイアされた『Rainbow Disco Club Vol.1』は、現行のエレクトロニック・クラブ・ミュージックの広野の中を、曲がりくねりながら進んでいる。DJとして、Prins Thomasはトラックの出自やスタイルを気にかけてきた様子はこれまで一度も無い。それよりも、トラックがどのようにミックスを前に進めていくかを気にしてきた。Donato Dozzyによる"Untitled (D2)"の鼓動するベースからスタートし、Floating Pointsの"Danger"へとつながっていく今回のミックスは奇妙なほど素晴らしいムードを生み出している。DiskJokke & StrangefruitによるThe Shooktの"Ghost In The Machine"での沼のようなリズムは、モーフィングしてKrystal Klearの"Squad"でのタフなエレクトロ・ファンクへと変化し、その後、Deepchord"Electromagnetic Dowsing"のMike Huckaby"Step 1"バージョンで、Huckabyらしさのあるディープネスを持ったダブ・ハウスが続いていく。こうしたトラックはロング・ミックスで重ね合わされており、滑らかに移り変わっていく。もし収録トラックに馴染みがなければ、いつトラックが終わって、いつ次のトラックが始まったのか、分からなくなることがあるだろう。これにより、感覚を狂わせる要素が本作に与えられているのだ。 Thomasは気ままなサウンドで華麗な模様を描くことが好きだが、今回もその愛が止まることはない。インテリ風なスタートであるにも関わらず、本作では常にピュアな楽しみを感じることが出来る。Deepchordのトラックの直後、Bjørn Torske"Furu"では、シンセによるホーンとハープの断片が、DJ Fett Burger & DJ Speckgürtel"Speckbass"では、大きなスラップ・ベースやマリンバが鳴らされ始める。その後、Marcellus Pittmann"Chicago Nights"の直線的なグルーヴでテンションが落ち着いていくが、すぐに切り替わり、見事に揺れ動く野心的なオーケストラ・トラックAnstam"Whiskey"が続いていく。 これはもうしょうがない。何でもありで思うままに数々のスタイルを駆け抜けるThomasがミックスしているのだから。しかし同時に、本作には強力な目的意識が与えられている。Margotの"Liuff Settanta"のはためくメロディは、Edmundy"Nadir"の脈打つシンセ・グルーヴへとつながっているし、Dimitri & Jaimyによって気取ったリミックスに仕上がったPrivate Production"Sad Sad Song"の次には、General Luddによるダブ・ハウスが収められている。そしてミックスの最後でも、一見、異なる方向性を持った2つ美学が組み合わされているのだ。つまり、Shedによる鮮烈な"Follow The Leader"と、GerdによるNY's Finest"Do You Feel Me"の"No-Kicks Re-Interpretation"の組み合わせだ。このラスト・トラックはキックが無いにもかかわらず、セロトニンが噴出してしまう。Thomasは、いつも通りコズミックに、リスナーの上を、下を、そしてど真ん中を流れるセットをまとめ上げた。親近感があって、壮大な素振りが満載。彼を置いて、この2つを両立させることが出来る者はなかなかいない。
  • Tracklist
      01. Donato Dozzy - Untitled (D2) 02. Floating Points - Danger 03. The Shookt - Ghost In The Machine 04. Krystal Klear - Squad 05. Deepchord - Electromagnetic Dowsing (Mike Huckaby Step 1) 06. Bjørn Torske - Furu 07. DJ Fett Burger & Speckgürtel - Speckbass 08. Marcellus Pittman - Chicago Nights 09. Anstam - Whiskey 10. Helium Robots - Jarza (Theo Parrish Translation 2) 11. Golden Teacher - Silver Chalice 12. Crash Course In Science - Flying Turns (Villalobos E=Mac2 Rmx) 13. Atom TM - Ich Bin Meine Maschine (Album Version) 14. Bee Mask - The Story Of Keys & Locks (Surgeon Remix) 15. Silent Servant - Lust Abandon 16. Kuniyuki - Shout (12 Inch Version) 17. Margot - Liuff Settanta 18. Edmundy - Nadir 19. Skatebård - Confirmation Bias 20. Kevin Starke - Need A Bigger Boat 21. Mark Du Mosch - The System (Nukubus Edit) 22. Private Prod - Sad Sad Song (Dimitri & Jaimy Mix) 23. General Ludd - Woo Ha 24. Moon Duo - Free Action (Tom Furse Mix) 25. Shed - Follow The Leader 26. NY's Finest - Do You Feel Me (Gerd's No-Kicks-Re-Interpretation)
RA