Akai Professional - APC40 MKII

  • Share
  • Akaiは今から5年程前にAPC40を発売した。これは初めて市場に出たAbleton Live専用コントローラーのひとつで、廉価版のAPC20、Novation Launchpadと同時期に発売された。その中でもAPC40は最もタイトな統合が図られており、非常に分かりやすい形でスクリーン上でのLiveのコントロール機能に対するフルマッピングが提供されていたため、APC40はライブパフォーマンス及びスタジオ制作における定番となった。その後、Ableton Liveはバージョン9で機能的に大きな変更が加えられていたため、APC40 MKIIを発売する機は熟していたが、今回Akaiは初代のアップデートを行うにあたりユーザーからのフィードバックを反映させ、時代への適応以上の改良を行った。 初代APC40では、5 x 8のクリップ・ラウンチ・マトリクスが左側に、その下には各トラック用のフェーダーとアーム/オン・オフ/ソロ・キュー用のボタンが備わっていた。Liveのセッション上にはこれらのトラックが対応している操作範囲が表示され、その範囲はバンクセレクトボタンを使い移動させることが可能だった他、クリップ・ラウンチ・マトリクスを囲むように配置されていたボタンでシーン・ラウンチなどグループ系の動作も可能だった。そしてその右側にはセンドとパン用の8個、その下にデバイス用の8個のロータリー・エンコーダーが用意されていた他、トランスポートコントロール、クロスフェーダー、テンポコントロール、メトロノームのオン・オフやMIDIオーバーダブなどの機能をコントロールできるボタンも備わっていた。 MKIIは初代と比べて大幅に変わった訳ではなく、「改良」というよりは「洗練」に近いイメージだ。いくつかの変更点は初代で問題になっていた部分を修正 したもので、例えばセンドやパンのコントロールは各トラックの上部に配置されるべきなのに何故右側に配置されているのか? という疑問点もMKIIでは解消されており、初代では3チャンネルだったセンドが、8チャンネルまでコントロール可能で、ユーザー設定から任意のアサインも可能になっている。また、クリップ・ラウンチ・マトリクスはその美しさに磨きがかかっており、ボタンの形状がLiveのクリップに合わせた長方形に変わった他、画面上のクリップと同じ色で発光するようになっている。素晴らしい視認性を確保できているのと同時に、画面を見ること無くクリップを色分けしてプレイできるため、パフォーマンス時の操作性が高まっている。各トラックのソロ/アーム/オン・オフボタンもクロスフェードアサインボタンと共に綺麗にまとめられている。更にクリップ/ストップボタンは誤動作を考慮してフロントパネルに埋まるように配置されている他、フェーダーも誤って曲げたりできないように、同様に埋め込まれている。 センド/パン用のエンコーダーの配置が変更された結果、課題となっていた右側の整理整頓が行われた。個人的に初代の右側のセクションは不要と思えるボタンの多さとその使いづらさから、使用しないボタンが多いと感じていたが、MKIIはRecord Quantizationボタンの排除と、他のボタンの追加が行われた上で整理整頓されたことで、以前よりも洗練された印象を与えている。8個のロータリー・エンコーダーの下には、トラックのデバイスとデバイスのコントローラーバンク間を素早く移動できるボタンと特定のバンク(例:ゲインやEQ 8の周波数やQ値など)を素早く選択できるBANKボタンが備わっており、Liveのデバイスの場合は、コンピューターの左下にどのバンクをコントロールしているかが表示される。また特定のデバイスに固定できるため、Live上の他のパートに目を向けている時でもそのデバイスを操作可能だ。このような特徴から、MKIIではロータリーの使いやすさが格段に向上したと言える。 トランスポート系は右側上部に移されたため、初代と比べて触りづらい位置になったが、これも誤動作を防ぐための意図的な変更だ。このようにMKIIでは、多くの機能がライブパフォーマンスに特化している。またMKIIの電源はUSBバスパワーのみになっており、他の電源端子は存在しない。また大きさも資料を読む限り、そこまでコンパクトではないが、フォームファクタの小型化によって幅が7cm小さくなり、携行性が向上した。大幅な小型化とは言えないが、17 inchのMacBook Proよりも僅かに大きいだけだ。また初代のやや仰々しい筐体デザインとは異なり、MKIIはシンプルな直方体なため、携行性に優れている他、他の機材と並べた時の収まりも良い。また筐体の素材も金属から頑丈なプラスティックに変わって大幅な軽量化が図られている他、Kensingtonロックにも対応している。テンポコントロールノブは他のミュージシャンとの連携に便利で、Liveのセッションレコーディングとして使用するフットスイッチも非常に便利だ。一方で、オートアームやMIDIアレンジオーバダブなどのスタジオ制作で頻繁に使用する機能は依然として配置されていない。察するに、Akaiの元へ寄せられたフィードバックで一番多かったのは、初代の持ち運びに疲れた人たちからのものだったのだろう(Akai側も使用しているプロミュージシャンの数が多い程良いと考えているはずだ)。 では、初代から乗り換えるべきなのだろうか(それとも、APC40を持っていない場合は、安価の初代を買うべきなのだろうか)? − APC40 MKIIは、スタジオでも現場でも使いやすさが格段に進歩しており、特に頻繁にライブをする人たちにとっては最高と感じられるような改良が加えられている。選択肢という面では、5年前に比べてMIDIコントローラーの数は多くなっているのは確かだが、MKIIがLive専用コントローラーの筆頭であり続けたAPC40の改良版であるということを考えると、この先数年はその地位が変わることはなさそうだ。 Ratings: Cost: 4.5/5 Build: 4.5/5 Versatility: 4.5/5 Ease of use: 4.5/5
RA