Robert Henke in London

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  • ヴィジュアルテクノロジーは現在、オーディオテクノロジーを凌ぐ勢いで進化しており、ヴィジュアルアーティスト達もまた、その勢いに乗って活動の場を広げている。Robert HenkeのLumière、そしてRobin FoxのRGBは、最新のレーザー技術を利用した代表的なショウであり、我々がこれまでに見た事もないようなヴィジュアルを映し出す。 更に彼らは、オーディオヴィジュアル・システムというものを超越するような、アーティスティックな何かを創造している。論理的に言えば、それらはエレクトロニック・アートと呼ぶのが正しいのだろう。 Robert HenkeがLumièreを初披露したのは、昨年のUnsoundだった。以来彼は、サウンドと、直視すると網膜が焼けてしまうほど強烈なレーザーをリンクさせ、それをスクリーンに投影するという技術を、より良いものにする為に研究し続けてきた。その技術は、止まる事なく変化し続けており、Henkeのウェブサイトによると、Unsoundの時の技術とはだいぶ変わっているとのことだ。筆者がメールインタビューを行ったところ、彼は、ウェブサイトに記載されている情報すらも今は時代遅れだと教えてくれた。それでは、Henkeが現在使用しているシステムを説明しよう。同じMIDIノートがサウンドとレーザーの両方を制御しており、更にそれぞれのノートは、スクリーンに投影される1つのイメージと1つのサウンドとリンクしている。また、MIDIコントローラーは、サウンド/レーザー両方のパラメーターの値を調整する。 例えば、キックドラムのようなサウンドそれぞれがある特定のレーザーの形とリンクされているのだが、そういったサウンドの数が徐々に減ってきている。Henkeはここ最近、自身で組み直したMax4Liveを使用している。このシンセサイザーは、レーザー・パターン・ジェネレーター・モジュールを音で反映させるものだ。彼は今もずっと、より細かい部分をコントロールする為の方法を追求し続けている。要するに彼は、ライトとヴィジュアルがよりシンクロして作用するインストゥルメントを開発し続けているのだ。 筆者はショウを観るまで、上述のことに関して何一つ知らなかった。要するに、強烈で緻密な経験が降って襲いかかってきたような出来事だったのだ。その空間では畳み掛けるようなブレイクビーツ・テクノとストイックなサウンドスケープが共鳴しており、音色のようなものはほぼ皆無であった。また、レーザーが描く様々なヴィジュアル、例えばスピログラフで描いたような曲線やリサジュー図形、あるいは多種多様な幾何学パターンなどが、高速度で現れては消えていった。時には1つの点が大きく広がるなど、ミリ秒単位で形を変えていくレーザー達が、見ている者の目に焼き付けられる。このプロジェクトの目的は、「シンクロニシティとダイバージェンス(発散)」の追求であり、オーディエンス側から見ると、その目的は達成されているように思われる。レーザーのヴィジュアルとシンクロしながら、たくさんの音の要素がシンセサイザーから放たれる。Barbicanのウェブサイトでは、Lumièreのことを「エレクトロニックミュージックの可能性を更に広げた」プロジェクトであると高く評価しており、実際にそうだと筆者も感じる。これほど理論的なショウは、世界中を探してみてもなかなか見つからないだろう。 Robin Foxのショウは、これと似ているが少し違った方針だ。サウンドはよりアブストラクトで、ロウなコードから直接生成されている。そして、赤、緑、青のレーザーが、全く同じコードによって制御されるショウは、「共感覚の生成」 を目的としているように感じられた。どのライトとどのサウンドがリンクしているのかを把握することもできそうだが、何も考えずにじっくりと見入るのもいいかもしれない。
RA