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  • バンクーバーのMood Hutクルーはグッド・バイブを提供するレーベルとして信頼できる存在であることを証明してきた。彼らの音楽は暖かみと充足感に溢れたハウス・ミュージックであり、コレクティブの中でおそらく最良のアーティストであるPender Street Steppersによるリリースからも、この点は明らかだ。Mood Hutの最新シングルは、Pender Street Steppersの片割れであるJack Juston単独によるものだが、彼にとって初のソロ作であるわけではなく、過去にレーベルがカセットテープのみを発表していた時期に彼は『Mother Official』という名の心地よいアンビエント作品集を2度、発表しており、どんな空間さえも静かなオアシスへと生まれ変わるような極上のテクスチャーを生み出す技を披露している。しかし今作はと言うと、インスピレーションを強力なダンス・ミュージックの中に探し求めた非常に躍動的な内容になっている。 本作でJutsonが至高の求道者であることが明らかになっている。ビンテージもののダンス・ミュージックの要素をふんだんに溶かし込んだ濃厚なトラック"Looking Forward To You"からスタートするが、ゆっくりと徘徊するベースラインと隙間を十分に取ったドラムはJames White And The Blacksによる80年代前半のディスコ・パンクを思い起こさせる。チープでありながら官能的な語り声は、初期のハウス・ミュージックをまねているのかもしれない。木漏れ日のようなギター・サウンドは純粋なヨット・ロックだろう。この組み合わせを前にして抗うことは到底不可能だ。"Take It 2 The Edge"は若干ながらパンチが増しているが、ラフな感覚が背景から聞こえてくるこもった話し声によって和らげられている。まるでスタジオにマイクを置きっぱなしにして、Jackが楽しそうに何かを口ずさんでいるかのようだ。Bサイドに収録された"Something (On My Mind)"は、風通しのいいディープ・ハウス・ナンバーで約10分に渡り延々と躍動している。気だるいサックスが少しと、ちょっとしたブレイクが挿まれているが、大きな展開はほとんどない。しかし、その効果が積み重なっていくことで途方もない恍惚感が生まれている。もしかしたらJutsonはもうアンビエントを作っていないのかもしれない。しかし彼の目指すものは何1つ変わっていないようだ。
  • Tracklist
      A1 Looking Forward To You A2 Take It To The Edge B2 Something (On My Mind)
RA