Daniel Jacques - Livet Efter Detta

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  • DVS1が主宰するHushのハウス寄りサブレーベルMistress Recordingsは、これまでRAのレビューで4の評価を下回ったことがない。レーベルの最新作であるDaniel Jacques「Livet Efter Detta」を数回聞いたとき、Mistressは遂に突き抜けた、という印象を覚えた。クオリティという意味ではなく、レーベルの音楽観が持つ拡張性という意味においてだ。レーベルはガンガンに踊るためのトラックを作っているわけではないが、Daniel Jacquesが2005年以降初めて本名名義で発表した本作では、これまでのレーベル作品が果敢に挑んできた領域よりもさらに深い空間を掘り進めている。 ダンス・フロアで本作が訴えかけてくるエネルギーを体験するなど、さらに少し時間をかけて本作を聞くと、「Livet Efter Detta」はMistressが展開する素晴らしい方向性に沿った新たな傑作EPであることが分かる。"End Of My World"は、ため息交じりにローズを用い、ディスコ風ビートをループさせたシンプルなトラックだが、チープなギター・サウンドや、少しだけ用いたハンド・ドラム、そして日本刀のように鋭く切り裂くオープン・ハイハットなど、その魅力は細かな部分に隠れている。この点は本作の大部分にも言えることだ。今となっては、その魅力はダークな雰囲気を持つ本作に含まれるユーモアなのだと思う。他のトラックはより殺伐とした密室的な内容になっており、キラキラとしたピアノのサウンドや、ぼんやりとしたパッドが船酔い感を増幅させている"Before I Begin"は、ファンキーというよりも不意に揺さぶられているような感覚になる。逆サイドの"Today We Move"と"Emotion Devotion"は素材を慌しく放り込み、Mistressがフォーカスしているハウス路線と比べるとテクノに近い印象を与えている。既に突出した存在であるレーベルにおいても「Livet Efter Detta」が魅惑的な作品となっているのは、プロダクションにおける繊細さを伴うこうした両極性を持つ形式のためだろう。
  • Tracklist
      A1 End Of My World A2 Before I Begin B1 Today We Move B2 Emotion Devotion
RA