Native Instruments - Molekular

  • Published
    Sep 16, 2014
  • Released
    $149 (Y17,800)
  • Share
  • 筆者はここまでモジュラーシンセの世界に飛び込むことを拒否してきたが、シーン全体が急速な成長を見せ、毎月何かしらのモジュールが数個発売されているという状況が続いていることから、拒否し続けるのは簡単ではなかった。故に、今回Native Instruments(以下NI)が発売したReaktorベースのマルチエフェクト「Molekular」を試せるチャンスに筆者は飛び付いた。Zynaptiqのデジタル信号処理(DSP)による、NIが言うところの「35種類のユニークなエフェクトが使えるモジュラーシステム」は、Analogue Havenのウェブサイトからとりあえず今のところは私を遠ざけてくれるように思えたからだ。そんな訳で、今回はMolecularがどのようなプラグインなのかをチェックしていく。 MolekularはReaktor内で動作するため、無償のReaktor PlayerかReaktorのフルバージョン(Reaktor 5のライセンスを持っている場合)が必要になる。Reaktor Playerを使用する場合の唯一の欠点は、自分のプリセットのセーブ(Reaktorでは「スナップショット」と呼ぶ)だが、セッション内のすべての設定はDAW上でのセーブ/呼び出しが可能となっている。 Molekularのアンサンブルを初めてロードすると、いくつかのパネルに分かれている秀逸なユーザーインターフェイス(UI)が立ち上がる。UIの下半分は4個のエフェクト(MolekularではDSPと呼ぶ)スロットになっており、上半分はメインディスプレイが中央に、そしてモジュレーションやルーティングの操作が行えるパネルがその両側に配置されている。一見しただけでは、気が滅入りそうな複雑なデザインに思えるため、初心者はMolecularに予め用意されている優秀なスナップショットを通じて、このソフトがどういう機能を提供してくれるのかを確かめてみるのが良いだろう。スナップショットは親切なことに様々なカテゴリに分かれており、6番目(最後の)カテゴリではその35種類のエフェクトモジュールが個々に試せるようになっている。 下部の4個のDSPユニットの名前またはプルダウン用の矢印をクリックすると、メインディスプレイ上にロード可能なエフェクトアルゴリズムのリストが表示される。その中のDual Delay、Equalizer、Filter、Level、Metaverbの5種類はどのスロットにもロードすることが可能だ。その他のエフェクトに関しては、4個のDSPユニット上に大雑把なカテゴリで振り分けられている。左から順に見ていくと、ユニット1はスペクトラルプロセッサー/ヴォコーダー/レゾナンス系、ユニット2はディレイ/リピーター、ユニット3は主にフィルター/フランジャー系、そしてユニット4はディストーション/ビットクラッシャーなどの歪み系となっている。 しかし、リバーブをスルーしてディストーションをかけたい場合はどうすれば良いのだろう?こういう質問が出てもおかしくないが、実はここからがMolekularのパワフルなルーティングパネルの本領発揮となる。4個のDSPユニットは直線的に繋ぐだけではなく、8種類のルーティングチャートによって好きなように繋げることが可能となっている。また各ルーティングチャートにはDSPユニットアイコンが表示されており、その位置を好きに入れ替えることも可能だ。そしてこの柔軟なシステムの最後尾に位置するのがパッチビューで、ひとつのDSPユニットのアウトプットを別のDSPユニットのインプット(またはフィードバックさせるために同じDSPユニットのインプット)へ直接ルーティングすることが可能な他、このバーチャルパッチケーブルにはフィルターとディレイがビルトインされている。簡単に言ってしまえば、「Molekularはモジュラーシステム」というNIの謳い文句通りなのだ。 価格相当の働きをするモジュラーシステムならば、どれでも必ず最低ひとつはモジュレーションソースが備わっており、そのサウンドに息吹を与えてくれるが、Molekularも同様で、16個のモジュレーションソースが用意されている。モジュレーションソースにはLFO、ステップシーケンサー、トリガーシーケンサー、ロジックモジュールが用意されており、すべてが同時に使用可能できる。そしてDSPユニットのコントロールパラメータへのアサインも非常に簡単で、モジュレーションパネルのAssignボタンをクリックすると、パラメータの横にコントロール可能なグレーのスライダーが表示される。スライダーはバイポーラーなので、パラメータはプラスとマイナスの2方向へ動かすことが可能だ。尚、Assignモードの時は、各パラメータの名前をダブルクリックすれば、どれがMolekularのモジュレーションソースをコントロールしているかがメインディスプレイ上に表示される。これは非常に分かりやすい機能だが、個人的にはそのモジュレーションソースがどこにマッピングされているのかも同時に視認できるようにしてもらいたかった。 さて、メインディスプレイ上でずっと回転しているものは何かと思っている人がいるかも知れないが、これはMorpherと呼ばれる機能で、基本的にはMolekularのスナップショットをストアするためのものだ。そしてそのストアしたスナップショットは、マウスのクリックや、Morpherの半径と角度をモジュレーションソースにアサインすることで、他のスナップショットへと変化させていく。個人的には、NIがかつて発売していたプラグイン で、スナップショット間のサウンドをモーフィングできたKoreに似ているように思えた。このMorpherは、Molekularで行えるエフェクトチェインの別の動かし方と言えるだろう。 結論から言うと、Molekularには非常に大きな感銘を受けた。すべてを理解するには分厚いマニュアルを読まなければならないが、カジュアルユーザーはプリセットだけで十分なサウンドを得ることが可能だ。エフェクト群はエフェクト版スイスアーミーナイフと言えるような豊富な種類を誇っており、音楽のタイプを選ばず使用できる。またピッチが関わってくるエフェクトにはピッチクォンタイズが備わっている(これはヴォコーダーだけではなく、自己発振するフィルターなどにも当てはまる)など、新鮮なサプライズも多い。Molekularが価格にふさわしい内容であることは自明の理であり、筆者の制作環境でも長きに渡り重用されるだろう。 Ratings: Cost: 5/5 Sound: 5/5 Versatility: 4.5/5 Ease of use: 4.5/5
RA