Lay-Far - It's On EP

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  • ここ数年で静かに吹くロシアのディープ・ハウス旋風は、もはや疑いもなく強くなっている。ウクライナ出身のVakula、モスクワ出身のAnton Zap、グルジアの新星であるHVLなど、取り分けカルト的な扱いを受ける奇才が多いように思えるが、モスクワからの新進気鋭の存在であるAlexander Lay-Farはどうだろうか。デビューは2011年頃で初期の作風はデトロイト・ハウスのざらつきを残しながらもより洗練されたスタイルを持っていたが、正統派ハウスをベースにしながら若さ故のパッション溢れる音楽性は実に真っ当だ。 2014年、Lay-Farは既に新作を複数枚リリースしているが、本作によって更なる注目を集める事は間違いないだろう。"Without"からして文句無しに素晴らしい内容で、ディスコ・サンプリングのような凛としたストリングス使いと色気のあるなシンセのコード展開が非常に優雅で、そこにねっとりとビートダウン風な生っぽいリズムが絡み、デトロイト・ハウスを欧州の洗練されたセンスで解釈したようなハウスは群を抜いている。一方、軽快であっさりとしたリズムや乾いたパーカッションが心地良い"Summer Is On (Dedicated To George)"は、耽美なシンセのメロディーと共に導入されるギターカッティングが爽やかな空気を舞い込み、透明感の高いクロスオーヴァーな曲となっている。裏面も抜かり無しの曲が収録されており、生き生きと跳ねるようなグルーヴが力強いブラジリアン・ハウスとでも呼ぶべき"Pensamento Novo"は、ファンキーなサックスや可愛らしいスティール・パンの音色も用いて、サンバの陽気な要素を持ち込んでいる。特筆すべきはフランスから突如として注目を集めているS3Aがリミックスを行った"Pensamento Novo (S3A Remix)"だ。ざらつきを持ったビートダウンなリズムと分厚いベースラインが安定感のあるグルーヴを生み、そこに豪華絢爛に光り輝くシンセやファンキーなサックス、そして高揚感を誘う女性ボーカルが渾然一体となって感動を呼び起こす劇的なリミックスとなっており、オリジナルとは異なる魅力を引き出す事に成功した。ハウスというフォーマットを尊重しながらも収録曲それぞれに異なる味があり、2014年はLay-Farにとって躍進の1年となるのではないかと期待するには十分過ぎる作品だ。
  • Tracklist
      A1 Without A2 Summer Is On (Dedicated To George) B1 Pensamento Nova B2 Pensamento Nova (S3A Würm Remix)
RA