Samuel Kerridge - Deficit Of Wonder

  • Share
  • 傑作LP『A Fallen Empire』以来となるSamuel Kerridgeの新作は、驚くような要素はほとんどないが、2012年にDownwardsからデビュー以降、彼が築き上げてきた破滅的なテクノの枠組みに基づいたものだ。あっぱれなまでに無表情なトラック・タイトルだが(Juno Plusは"Downwards製のタイトル生成マシーン"で次々と吐き出したような名前、と上手いこと言っていた)「Deficit Of Wonder」においても、その殺伐さは留まるところを知らない。 普段よりも大胆にキック・ドラムを使用したオープニングとディストーションによって分厚く仕上げられた"Operation Neptune"は、残りの収録曲の雰囲気がどのようなものになるのかを示している。お仕置きのような重量級のシンセが降りかかり、キックと共に消え去っていくと、悪意に満ちたサウンドが沸き立ち始める。その後は再び同じシンセとキックが姿を現すだけだが、その不気味さは倍増している。シンプルになったシンセが積み重なっていく"Paint It Black"から、半分何を言っているのか解読不可能なボーカルがざらついたサウンドによって次々と埋もれていく深く禍々しいトラック"Surrender To The Void"まで、まるでサビつくまで放置された素材が使われているかのようだ。『A Fallen Empire』が全編を通じて時折、似通った内容になってしまっているのでは、と思うところがあったが(トラウマになりそうなラスト・トラックで、その疑いを晴らしてはいるが)KerridgeはEPのフォーマットが綺麗にハマっているようだ。そして今回のトラックはこれまでで最も強力なものになっている。
  • Tracklist
      A1 Operation Neptune A2 Surrender To The Void B1 Paint It Black B2 Paint It Black (Reprise)
RA