- The KVBのアルバムはよく出来ており、楽しめる内容なのだが、フルレンクスのパッケージとして考えると、若干ながらのマンネリ感があり、良い部分を損ねているように思う。しかし、彼らのカタログを全体的に聞いてみると、驚くほどにバリエーションに富んだサウンドであることが分かる。例えば『Always Then』のドラマ性、『Immaterial Visions』でのじっとりと歪んだ作品、『Minus One』のおぼろげなゴシック様式、そしてDownwardsに提供した陰鬱なインダストリアル12インチ「Into The Night」のように、非常に様々だ。
今回のミニLPは、Anton NewcombeのレーベルA Recordsから彼らにとって2枚目となる作品だ。StereolabとTh' Faith HealersのメンバーJoe Dilworthをドラマーに迎え、Newcombeのベルリン・スタジオでレコーディングされた本作は、これまでのアルバムに比べて新鮮さを増しており、反復感が薄まっている。これはおそらく、収録時間が少しだけ短くなっているからだろう。"From Afar"では、密度の濃いベースラインと、重たくよじ登るシンセが、ふんわりとしたボーカルによって中和され、"Heavy Eyes"では、ディストーションが作り上げる分厚いベッドからボーカルとシンセが高く舞い上がっていく。最もストイックな作品となっているのが"Between Suns"で、ギターによる激しい音の壁に囲まれたセクションと、終盤での力強いドラミングを用いている。このトラックは、柔らかく甘いハーモニーと艶やかな曲線を描くギターの旋律による"Across The Sea"や、"Cartesian Bodies"と素晴らしいコントラストを成しており、"Cartesian Bodies"では、意気揚々としたメロディと滑り込んでくるような勢いがアップビートな雰囲気を生んでいる。ハイライトになるようなトラックは一切ないが、本作におけるエモーショナルな音色がこれまで以上に多様になっていても、そのクオリティが一貫して高いものであるという点は、The KVBが誇るところだろう。
TracklistA1 All Around You
A2 From Afar
A3 Heavy Eyes
B1 Cartesian Bodies
B2 Across The Sea
B3 Between Suns