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Freerotation 2014
Published
Aug 6, 2014
Words
Will Lynch
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今年のFreerotationの日曜夜の話だ。Move Dがマイクを持ち、ある木に向かって心のこもったセリフを叫んだ。その“木”とは、Baskerville Hallの敷地内でも人気スポットのうちの1つであり、昨冬の嵐で倒れてしまった木だ(Freerotationのもう1つの名物である、あの異常な程柔らかい樹皮を持つグニャグニャの木と混同しないように)。その木が無くなってしまったというニュースが数ヶ月前に知らされた時、FreerotationのFacebookグループには嘆きのコメントが数多く書き込まれた。そして今年のフェスティバルでは、小さな屋外ダンステント、The DomeのDJブースの背景に、その木を追悼したイラストレーションが描かれていた。 昨年同様、強烈なグリーンのジャケットを羽織っていたDavid Moufangはその日の午後、南アフリカ出身のDJ Meanwhileと一緒に過ごしていた。彼の風貌は決して小綺麗と言えるものではなかった。色褪せたBasic Channelのシャツに身を包み、極太のジョイントを絶え間なく吸い続け、彼のバッグからはグチャグチャのレコードが飛び出していた。Moufangが1曲目に大げさな70sロックをかけると、2人はその後、楽しげであまりこだわりのなさそうなハウスミュージックをプレイし続け、最後はESP "It's You"の、長くて奇妙なUnderground Mixで幕を閉じた。
ブース前の芝生の上では、参加者たちが思い思いにふざけあっていた。リンボーダンスで競い合っているグループもあれば、古代ローマ風のトーガに身を包んだ男性が見知らぬ誰かにメロンを手渡していた。また、例年以上に多くの人が仮装コスチュームを楽しんでいた。全身黄色の衣装に偽物のマイクを持った男性は、よくよく見てみると
Ninja Turtles
のApril O'Neilの仮装をしていたようだ。前夜にDJをしていたOli Warwickは何かの監督官のような出で立ちで登場し、青いユニフォームと、彼がフロアに向けて差し出す手書きのメッセージによって、会場は大きく盛り上がった。“House Nation Under A Groove”がかかっていた頃、例のリンボー対決はクライマックスを迎えており、ある参加者がありえないほど低く設定されたバーに挑戦していた。 彼が無事にバーをくぐり抜け、再び立ち上がった時、Warwickはこんなメッセージを用意していたのだー「この瞬間はお前のものだ!」 Warwickの首には、安っぽいメダルやリボンがたくさんかけられていたーまるで、スペリングコンテストの勝者かのように。あるFreerotaterが、彼女なりにヤバいと思った他の参加者達にメダルを配っていたのだ。 受賞者の1人には、ウェールズ出身のDJであり、同フェスティバルのレジデントであるLeifがいた。彼はその週末、計3回DJブースに立った。金曜日の夜、Leifはオレンジ色の小さなRoom 3で、Hessle Audioの隠れた名曲であるElgatoの“Luv Zombie”を見事にプレイした。その後彼は、自身が運営するレーベル
UntilMyHeartStops
の最新作のA面である、Steevioによる素晴らしいシンセトラックへゆっくりと繋げた。ドレッド頭のウェールズ人ベテランSteevioは、パートナーであるSuzybeeと共にFreerotationを主催している人物だ。
SteevioとSuzybeeは別の日、Room 1で大量のモジュラーシンセ群を駆使したセッションを披露した。Freerotationのパフォーマンスのほとんどがそうであるように、彼らのそれもまた毎年恒例のものである。彼らの直前にパフォーマンスしていたのは、もう1人のウェールズ人DJであり、Leifと共にUntilMyHeartStopsを運営するJoe Ellisだ。Ellisは、この素晴らしいウェールズ人達によるサウンドの結晶のようなプレイをする。パンチが効いていて、エレガント。少しだけシュールで、例えピークタイムであってもチルアウトっぽい要素をほんの少し加えるのだ。また、彼のセットには、大抵のフェスやクラブには地味すぎるであろう、しかし素晴らしいトラックの数々が組み込まれていた。その例としては、Jitterbugの“Speaker's Corner”や、Octoberの“Decompression Chamber”(UMHSの傑作リリース)などが挙げられる。 Freerotationのメインルームは、とりわけこういった音を聴くのに最高の場所だ。ひっそりたホテルのラウンジには、フェスティバルの期間中、シンプルで親しみやすい、少しマヌケな装飾(これもまた、Freerotationの魅力の1つである)が施され、そこはサイケデリックなコクーンのような何かに変化する。ブース内には琥珀色の光を放つデスクランプが設置され、アーティスト達は素晴らしいヴィジュアルに囲まれる(FreerotationのVJ陣の腕は別格であり、ラインナップにもアーティスト陣と並んでクレジット表記されている)。そんな空間だから、パーティーチューンは普段以上の威力を発揮する。Sven WeisemannはTesselaの“Hackney Parrot”やHardriveの“Deep Inside”をドロップし、時折バックスピンを挟みながらフロアを盛り上げた。Shackletonは例のように、強烈なベースラインよりも、眩惑的なテクスチャーや狂ったようなリズムでクラウドを魅了した(多少は重低音もあったが)。そして、Voices From The Lakeは素晴らしいクロージングセットを披露してくれた。2時間に渡るスマートで超繊細なテクノに心を奪われた我々クラウドは、カーペットが敷かれたダンスフロアの上でウットリとしながら体を揺らしたのだった。
Freerotationに行くと、いつも時間が短すぎると感じる。しかし終わってみると、数えきれないほどたくさんの良い思い出があったことに気付くのだ。手短に今年のハイライトを紹介すると、PortableがThe Domeでメランコリーなシンセポップを歌っていたことや、Room 3でAcido RecordsのボスDynamo Dreesenが普段とは全然違うプレイをしたこと(彼自身のレコードがクラブミュージックのように聴こえたのはなかなかレアだった)。Octoberが初日の夜の段階で既に全力のレイヴセットをプレイしたこと(ダメな理由なんてないし、彼自身のトラック“Singularity Jump”はフェスティバルのハイライトの1つだった)、そしてObjektがほぼずっとBPM130以上をキープしつつ、Gesloten Cirkelの“Zombie Machine”や自身の未発表曲をプレイしたことなどが挙げられる。 もちろん見逃したことだってある。何故なら体は1つしかないし、一度にたくさんの場所にいることはできないに決まっているのだから。それ故、筆者はSurgeonがチルアウト・ユルトで披露した
セット
や、DJ Boneが自身の暴力的なテクノレコードの数々を投下した様子(こちらはほんの少しだけ覗くことができたが、全く聴き足りなかった)、もしくはJoey Andersonが筆者の永遠のお気に入りであるMathew Jonsonの“Typerope”をかけた瞬間(この時はMidlandがRoom 2、Dynamo DreesenがRoom 3でプレイしていたので、致し方なかった)を、残念ながら聴き逃してしまった。
音楽の他にも、Freerotaionにはたくさんの魅力がある。夜になると、ホテルの側壁にはプロジェクションが投影される。トイレの周りには、様々な名言が貼付けられている(Dr Seuss、TS Elliot)。愉快なセキュリティスタッフ達。筆者の姿を見る度に腹を抱えて大笑いする、ビーガンプレートを売る子供達。ユルトの貸し出しスタッフFredと、彼の犬Silus(「ここにいる奴らはみんな犬が大好きなんだ」とFredは言っていた)。 常に正装に身を包んだ音響スタッフ(ベスト、パリッとした白シャツ、たまにパイプを加えた人もいる)。そして、何と言っても忘れられないのは、Baskerville Hallを取り囲む、緑の生い茂った景色だ。怒りん坊の農場主(Freerotationの手強い相手。毎年騒音の苦情を言いにくることからそう呼ばれている)でさえ、愛すべきキャラクターの1人として認識されている。 土曜日の夕方、その時もマイクを持っていたMove Dはクラウドに向かって、彼が心の底から皆を愛しているんだと話しかけた。それは、本当にそう思っていなければ、単なる常套句になってしまうようなセリフだった。安っぽく聞こえるかもしれないが、Freerotationは、クラウドやアーティスト、ヴェニュー、音楽そのものをも包み込むような、大きな愛に満ち溢れている。600人の仲間達が、3日間に渡って一風変わった古いホテルで遊び回るFreerotationは、フェスティバルというよりもむしろ、大掛かりなお泊まりパーティーのようにも感じられる。Moufangがあのセリフを放ったダンスフロアをウロウロしていると、大きなボール紙に型取った“TEULU”という言葉が吊るされていることに気付いた—“TEULU”はウェールズ語で、"家族"の意味だそうだ。
Photo credits:
Daddy's Got Sweets
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