Mackie - MR6mk3 / MR10Smk3

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  • Mackieはハイクオリティだが比較的低価格のコンソール群によって知名度を高め、価格とクオリティのバランスが良いという評価を勝ち得てきたが、スタジオモニタースピーカーもこの評価の向上に一役買っており、HRシリーズはプロやセミプロに愛用されている。そしてMackieは更に安い価格帯のモニタースピーカーシリーズでもこのノウハウを活かしている。MR6がそのシリーズで、今回紹介するmk3は第3世代となる。尚、ステレオモニタースピーカーとして機能する他、MR10Sのサブウーファーシリーズ(こちらもmk3となる)と組み合わせて低域の強調も可能だ。 今回は2発のMR6mk3にMR10Smk3を繋げてテストした。 まずはMR6mk3を見ていこう。MR6の6という数字は6.5インチポリプロピレンウーファーから取られたものだ。ウーファーの上には1インチシルクドームツイーターが配置されており、クロスオーバーポイントは3.5kHzに設定されている。ボディは価格にしてはしっかりとした作りで、奥行きもある。コネクター及びコントロールは背面に配置されており、入力はXLR(バランス)、1/4インチTRS(バランス)、RCA(アンバランス)の3系統が用意されているため、様々な機材をダイレクトに接続することが可能だ。またヴォリューム用のレベルコントロールの他にも、高域(+2/-2 dB)と低域(+2/+4dB)のレベルコントロールが配置されているため、設置する場所に合わせた音響設定が可能になっている。全体の周波数特性は46Hzから20kHzになっており、このサイズと価格のモニタースピーカーとしては申し分ない低域の再現能力を誇っている。 スペックはひとまず置いておき、このモニターを聴いてみると、エレクトロニック・ダンスミュージックの制作とミキシングに求められる諸条件とダイナミクスを備えていることが理解できた。 非常にクリアで満足のいくサウンドで、自然なトーンと微妙なEQやダイナミクスの変化にも反応するトーンのバランスが上手く取られており、スイートスポットの広いデザインとなっている。スイートスポットが広いため、ステレオイメージの再現性も高まっており、非常にディープでディテールの細かいサウンドが楽しめる。このデザインとサウンドで最も満足できる部分は、 クリスピーでシャープなトランジェントを生み出し、ビート重視の音楽の制作が楽しくなるモニターを作ろうというMackieの意図がしっかりと形になっているという点だろう。キックはパンチがありクリアで、スネアやハイハットはGenelecのモニタースピーカーを彷彿とさせるクリアなサウンドだ。この結果、気持ち良くミキシング作業が行えるようになっており、 パーカッシブなサウンドが前に、そしてディープでより空間的なサウンドが後方に配置される奥行きのあるサウンドに仕上がっている。 周波数特性(特に低域)については、多くのプロデューサーにとってはMRmk3だけでも十分だろう。しかし、サブウーファーがカバーするような更なる低域を追求したい人にはMR10Sが用意されている。MR10SはMR6と簡単に統合可能で、10インチグラスアラミドコンポジットウーファー、木製キャビネットが採用されている。こちらも入力はXLR、1/4インチTRSが用意されており、MR6とは1/4インチTRS経由で接続できる。またノンステップのロータリーダイヤルでクロスオーバー周波数を40Hzから180Hzまで自由に設定することが可能で、環境や制作しているトラックに合わせて自由に音響設定が行える点は便利だ。更に、気になっていた人も多いと思うが、MR10Sの低音はかなりの迫力で、MR6の能力と深みを更に魅力あるものにしてくれるだろう。しかし、その低音が強すぎると感じることはない。小さなヴォリュームでも自然な響きの低音が再生されており、また防振ゴム脚が付属しているため、残響による不必要な低域を抑えてくれている。 唯一残念に感じたのは、MS10とMR6のコンビネーションはサラウンドのミキシングにあまり向いていないという点だ。もし、このようなクオリティがこの価格帯で手に入るのであれば、映像系の音楽を担当している人たちには喜ばれただろう。もちろん、この問題はオーディオインターフェイスの各アウトプットを直接各スピーカー/ウーファーに接続することで解決できる。よって、サラウンド環境で仕事をする人にとっても、チェックする価値はあるだろう。 今回MRシリーズはMR6mk3以外も調整を行った。それぞれ独自の周波数特性を持つ、ワンサイズ下のMR5とワンサイズ上のMR8(それぞれウーファーのサイズが異なる)が用意されている。言うまでもなく、この価格帯でモニタースピーカーの購入を考えている人は、これらを試してみるのが良いだろう。この価格帯にはKRK、Yamaha、Adam Audioなどの製品もあり、それぞれ同じ価格帯で高い性能を誇っているが、よりドラマティックで正確な低域が欲しいという人には、Mackie独自のこのサブウーファーが既に用意されているMRシリーズが一歩リードするかも知れない。予算があまり潤沢ではない人にとってハイクオリティなモニタースピーカーの購入は今がベストなタイミングと言えるが、このMackieの新しいMRシリーズは、比較検討を更に難しくするだろう。 Ratings: Cost: 4.5/5 Versatility: 4/5 Sound: 4/5 Ease of use: 4/5
RA