Charles Hayward - Smell Of Metal

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  • 70年代から80年代にかけてThis HeatやQuiet Sunを中心に様々なバンドでドラマーとして活動してきたCharles Haywardが1990年にMark RothkoへのトリビュートとしてSub Rosaに残した音源をJT TwitchとMaximillion Dunbarによるリミックスを加えたものが本作だ。KeihinがリリースしたミックスCDに『This Heat』があるが、本人曰く、バンド名との関係性はあまりないと過去のインタビューで語っているものの、本作からもThis Heat時代から一貫している同様の緊張感が漂っており、冷たく青みを帯びた圧倒的な熱量が核となる部分に渦巻いていることが分かる。また今回のように、既存の作品を再度、現行の視点から捉えなおし、当時とは異なる価値観をもって提示する点は、DJという行為の中で頻繁に見受けることの出来る姿勢でもある。 口笛のようなサウンドとホーミーが牧歌的に響く中、ノイジーなパッドが絡み合う"Lopside"。立体感と奥行きをしっかりと感じさせるHaywardによるドラミングはメインの立ち位置というよりも、楽曲の展開を支え、時にアクセントを加える役割を担っている。一方で同曲をリミックスしたJD Twitchのバージョンでは、サンプリングされてループされるドラム・フレーズに新たにリズムが追加され、その存在感が増している。Haywardの世界観を保ったまま、JT Twitchらしいコズミックな要素を注入したトラックは後半にかけて混沌としたサウンドスケープを作り上げていく。緩急をつけたハイハットの展開が特徴的な"Smell Of Metal"では生ドラムに、加工されたクラップ・サウンドが追従していくことによって質感上のコントラストを生み出し、ウワモノとして使用されている金属音はトラックに漂う空気を一層引き締め、さらにスリリングな感覚を与えている。オリジナルのリズムを細かくカッティングしダウンテンポに再構築したMaximillion Dunbarによるリミックスでは、暖かく豊かなうねりを起こすシンセ・フレーズによって印象をがらりと変えている。本作のように過去の作品、ひいてはその背景に意識を促す機会を与えてくれるプロジェクトは今後も歓迎したい。
  • Tracklist
      A. Lopside B. Smell Of Metal C. Lopside (A JD Twitch Optimo Espookio version) D. Smell Of Metal (Maximillion Dunbar version)
RA