Lee Bannon - Alternate/Endings

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  • ジャングルが本格的に(英語サイト)再興している中、Lee Bannonはこれ以上にない絶妙のタイミングで本作をリリースした。ニューヨークを拠点とする彼はこれまでのところ、ヒップホップのプロダクションやJoey Bada$$との作品でよく知られている。しかしながら、Ninja Tuneからは初めてのリリースとなるこの作品ではジャングル全開の音楽を展開している。もしBannonが幼少期の一時期をサクラメントで過ごしていなければ、この動きは思いがけないことに思えるだろう。この街はジャングルとドラム&ベースのスピリットが今でも激しく燃え続けている場所なのだ。『Alternate/Endings』ではオールド・スクール・ジャングルを現行のヒップホップ、特に深く煙たい感覚が増したクラウド・ラップに組み合わせており、その結果、最近の記憶の中で最も素敵な驚きに満ちた仕上がりとなっている。 "Resorectah"の最初の瞬間から、ブレイクビーツがリスナーを切り刻もうとしていることが分かる。しかし荒々しく打ち付けるイントロの後には、サウンドはアンビエンスへと散らばっていき、ガス状のうっすらとした空気の中を流れる冷たい潮風に乗って脳裏に焼きつくメロディが運ばれてくる。全てを吸い込むようなシンセと大音量で鳴り響くホーン・セクションによる"NW/WB"での拷問のような狂気のジャングルを聞くまでには、本作がダイナミックな作品となっていることが明らかになるだろう。アーメン・ブレイクが全体を通して用いられているが、この作品においてBannonはアーメン・ブレイクを限界まで使い果たすのではなく、このブレイクが持つ混沌とした性質をしっかりと抑制させている。サイケデリックなトラック"Phoebe Cates"では、ゆっくりとして、トラップ・ラップからの影響を窺わせる構造からジャングルを描き出している。一方、"216"でのLex Luger流のハイハット使いも秀逸だ。非常にナチュラルにハイハットのサウンドをブレイクビーツへとモーフィングさせている。Bannonは自身のサウンドを全く新たな形へと変化させることを恐れてはいないようだ。 『Alternate/Endings』にはジットリとしたアンビエンスが充満している。例えば"Bent/Sequence"では、Burial的なサウンドスケープの中で純度の高いドラム・アレンジと光の届かない陰鬱な世界、そして息を呑むほどに美しいボーカルに焦点があてられている。Lee Gambleの『Diversions』のファンなら、このトラックも気に入るのではないだろうか。本作には"静"の世界が広がっており、作品そのものがゆっくりと呼吸をしているようだ。いつまでも名残惜しく同じ場所に留まるのではなく、かといって全力で駆け抜けていくわけでもない。そして"Readly/Available"にてアルバムはクライマックスを迎える。10分間に及ぶこのトラックではブレイクビーツの雨が降り注ぎ、全てを宇宙へと放り込む。作品全体を通じても言えることだが、見事の一言だ。
  • Tracklist
      01. Resorectah 02. NW/WB 03. Prime/Decent 04. Shoot Out The Stars And Win 05. Bent/Sequence 06. Phoebe Cates 07. 216 08. Perfect/Division 09. Value 10 10. Cold/Melt 11. Readly/Available 12. Eternal/Attack
RA