FLOPPY feat. Moodman and Nus

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  • 東京のクラブシーンで経験を積んだMomoとFabioが札幌にてオーガナイズするパーティーFLOPPY。過去には彼らの拠点PROVOにてKABUTO、dj masda、Taroなど国内の名だたる実力派をゲストにパーティーを行ってきたが、前回からは名店Precious Hallに開催地を変更。今回は満を持して、念願だったというMoodmanを招致して行われることとなった。オープンアクトはMomoが担当。緩やかなダウンテンポから徐々に四つ打ちへシフト、クールなミニマルトラックにさりげなく有機的な要素を織り交ぜていた。Fabioは空を漂うようなディープハウスを、ミックスで緩急をつけながらグルーヴを生み出す。中盤からは奇妙な質感のミニマルで観衆を危うい領域へと引き込む、強い引力を感じるDJであった。 NUS aka Naohito Uchiyamaのライブはストリングスや民族楽器のオーガニックなサウンドから、宇宙を想起させるような力強いシンセフレーズまで幅広い音を独特の世界観で纏めあげる。骨太でグルーヴィなリズムに美しく表情豊かなフレーズが乗る、URにも引けを取らないギャラクティック・テクノでこの日のピークを飾った。Precious Hall初登場となるMoodmanは、空気を一変させるメランコリックなフレーズでスタート。ミニマルなハウスグルーヴを中心としたプレイだが、焦らしながらも冗長さのない抜群の加減で観衆をひたすら踊らせる。終盤に差し掛かると、突如堰を切ったように美麗でNYチックなハウスで畳み掛け、一気にフロアは興奮のるつぼに。フロアの空気を操り続ける集中力と、ギャップを快楽性に変えるミックスの手腕が十二分に発揮されていた。ラストはジャズ、ソウルからスカのクリスマスソングへと繋ぐ心にくい演出で締めくくった。 Precious Hallは、フロアを囲むような独特の配置でスピーカーとウーファーが置かれており、力強く濃厚な音の塊を体験できる。そしてなおかつ、何時までも聴き続けられるような素晴らしい質感も実現していた。照明はほぼミラーボールが散らす光のみで、否応無しに音楽へと浸ってしまうような空間。札幌のダンサーは、音への集中力と、幅広いジャンルに反応する姿勢が印象的で、パーティーの中盤以降、200人以上を収容するフロアは常に熱気に満ちていた。店内ロッカーの装飾や至る所に置かれた原始芸術のオブジェ、バーに飾られた無数のフライヤーとポスター、やや年配の熟練のスタッフ。それら全てから、Precious Hallが札幌のアンダーグラウンドな文化を支えた場所だということが伝わってくる。そんな伝統の重みにも負けず、FLOPPYは暖かく歓喜に満ちたムードを造り上げていた。 アフターは札幌のパーティーピープルにとっての隠れ家PROVOで開催。洒脱で隠れ家的な雰囲気があるスペースだ。ここではFabioとMoodmanがプレイ。特にMoodmanのDJはハウスからディスコ、和モノまでを包括した、飛び抜けた知識と技量を兼ね備えた彼ならではのもので、Precious Hallで披露したものとはまた違った選曲を堪能することができた。ローカルシーン特有の熱意と、訪れていた人々の家族のような強い結束が一貫して感じられた。東京から足を運ぶ価値があると自信を持って言えるパーティーであった。
RA