- L.I.E.S.がGunnar HaslamのデビューLP『Mimesiak』をリリースした頃、ニューヨークのエレクトロニックミュージックシーンには地元の人たちは誰も居なかった。かろうじてサウンドクラウドで彼をフォローしているかフェイスブックで投稿に"いいね"を押している程度だった。それから数ヶ月が経ち、2枚目のリリースとなる「Bera Range EP」がArgotより発表されたことにより、Gunnarの新たな一面が動き出そうとしている。
前述のアルバムと同様、今回のEPに収録された3つのトラックは驚くほどに豊かな質感を持っており、Haslamが作り出す世界、つまり音楽的な感性に溢れるテクノへとリスナーを誘っている。陰鬱なキックによってスタートする1曲目のタイトルトラックは暴力的なスネアと激しく揺れ動くドラムサウンドへと展開していく。リズムが影へと潜んでいくにつれ、全方位に覆いかぶさるようなシンセがゆっくりと出現しトラックをぐいぐいと引っ張っていく。そして高く上昇していきながら、そのサウンドは次第に激しさを増したところへ、飛び込んでくるようにビートが再び打ち鳴らされる。何とも大胆なスタートだ。機敏なブレイクビーツから中毒性の高く綿密に作られた躍動するシンセへと展開していく"Optional"はより軽快な印象だ。ノックしているかのようなリズムと微かにゆらめくサウンドのベールの中を惰性運行しながら、Haslamは力を加えることなく大胆でサウンド豊かなエレクトロニカを形作っている。"Bera Range"でのしわがれたようなキック音を再び用いた"Nevenoe"は、より気難しい雰囲気の中で、石版のような灰色をした淀んだテクノトラックとしてスタートする。しかし、暖かく波打つベースライン、鋭いクラップ、そして相関関係にある2つの美しいメロディによって、Haslamは驚くほどエモーショナルなトラックへと変容させている。
TracklistA Bera Range
B1 Optional
B2 Nevenoe