Akkord - Akkord

  • Share
  • それが意図したことではなかったとしても、SynkroとIndigoがAkkord名義にて制作する音楽は最近ではどこでも見かけるようになったローファイなハウス・テクノへの回答なのだと思う。このプロジェクトは元々、匿名で展開していたのだが、それも納得だ。Raster-Notonのように彼らの音楽は恐ろしくクリーンな響きを持っており、それ故に制作者の顔を感じさせないものだったからだ。このマンチェスターの2人組は自らの音楽を説明する上で常にテクノを引き合いに出しており、長い時間をかけて、彼らはこのジャンルが持つ伝統的なアイデアへとじわじわと近づいており、このデビューアルバムで彼らはさらなる接近を見せている。『Akkord』はダンスミュージックとしては酷くテクニカルな作品だ。この音楽で踊ることも可能かもしれないが、鉄板で作られたように鈍く輝く世界に、ただただ感心してしまうような作品かもしれない。 メタリックな感覚がアルバムを通じて一貫している。美しくシーケンスが施されており、そのため、これでもかとフロアライクなビートが畳みかかって来るまで、いまかいまかとビートの到来を待ち望んでしまうことだろう。深く瞑想しているかのようなトラック2曲によってアルバムがスタートした後、"3dOS"にて、いよいよ"テクノ"が襲い掛かってくる。このトラックはAkkordの音楽性を如実に表しているものかもしれない。下降してくるベースラインはまるで自らの圧力で捻じ曲がっているかのようだ。そしてトラックは突如、完全なる沈黙の世界へと飛び込んでいく。彼らは以前も同様のトリックを使っているが、"3dOS"ではさらに磨きがかかっている。そしてこのように、彼らがこれまでにやってきたことに磨きをかけることもまた、本作で貫かれているテーマの1つだ。このトラック後、Akkordは様々なスタイルを見せていく。漂うようなダブテクノ"Conveyer"、これまでには無かったようなスローなテンポでじりじりと展開する"Channel Drift"、さらにはグリッチを取り入れた"Hex AD"等々だ。 Akkordは決して自身の核となる部分を忘れることはしない。そして一見、限られた素材しか無いように見えるところから、驚くほど多彩なサウンドを生み出している。そして本作はこれまで以上に緊張感溢れるテクノアルバムだ。しかし、それだけではまだ言い得ているとは言えない。少しでも新たなサウンドが入って来ようものなら、この世界は驚くほどに姿を変える。例えば、"Folded Edge"での、ちょっととしたドラムブレイクが自由に挿し込まれ、音楽に予想不可能性をもたらしているのが堪らない。これが無ければ、完全に杓子定規なトラックになっていたことだろう。即興録音もこうした要素を持っている。しかし『Akkord』において、SynkroとIndigoは徹底的に細部まで拘るアプローチがどれほど興味深くエキサイティングなものになるのかを証明してみせた。
  • Tracklist
      01. Torr Vale 02. Smoke Circle 03. 3dOS 04. Folded Edge 05. Conveyor 06. Hex AD 07. Channel Drift 08. Navigate 09. Rocendal 10. Undertow
RA