Future Terror 12th Anniversary

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    Dec 12, 2013
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  • デザイナーブティックやイタリアンマーケット、そして犬専用のヘアサロンなどが立ち並ぶ代官山の街を少し歩くと、そこに都内でも最高峰レベルのクラブ/コンサートスペースであるUNITが現れる。筆者がFuture Terrorの12周年パーティーへ参加する為にヴェニューに到着した時会場はすでに満員となっており、バー前をなんとか通り抜けて、ようやく少し低い位置にあるダンスフロアに辿り着いた。照明は最低限にまで落とされていて、その中でぼんやりと照らし出されていたのがオープニングアクトのTwin Peaksだ。観客はいわゆるテクノファンとは少し違い、個々がそれぞれに音楽を楽しんでいるように見え、彼らは頭をもたれながら、UNITの強烈なサウンドシステムを通して鳴り響くビートにロックされたような動きをしていた。そしてこの日のラインナップは、これら全ての環境には完璧と言えるものであった。 フロアの照明は、Metaspliceのライブセットの間も依然として暗いままだった。このフィラデルフィアのデュオは、彼らのトレードマークである電子ノイズに、まるで偶然の産物かのようなタイミングでビートを入れる。筆者は自分が、例え拍がないときでさえ、サウンドシステムの間に浮かぶ楽譜に倣うかのようにして体を動かしていることに気がついた。彼らの音楽は素晴らしいものだったが、同時にその音をフロアに伝える術にも長けていた。けたたましいというよりは沈むような、内にある何かが伝わってくるような音だ。そのことによって、通常のクラブという環境では少しアブストラクトになりがちな彼らの音楽の魅力が存分に発揮されていた。 次に姿を表わしたのは、ハノーファーを拠点とするアンダーグラウンドクルーGieglingの一員であるVrilだ。彼が演奏を始めた途端照明のレベルは上がり、この日初めてフロアがカラフルなライトで彩られた。Vrilのダビーなハウスやテクノは、Metaspliceのパフォーマンスに比べてダンス向きであったにも関わらず、Metaspliceほどフィジカルだったとは言えず、筆者の集中力は少し逸れてしまった。 MetaspliceとVrilの両者はステージ上でプレイしたが、その後登場したDJ Nobuはフロアと同じ高さに設置されたブースに立った。プレイ中の彼は、狂った、とはまでは言わないが猛々しい表情を見せており、彼の周りを囲むCDJやターンテーブルなどの機材が、彼がフロアに飛び出してしまうのを抑えているかのように見えた瞬間さえ何度かあった。彼は時たまスタンダードな4つ打ちをプレイしてみせたが、できる限りイレギュラーなテクノのビートを多くプレイしていたように思え、ミックスの最中はまるで怒った神が嵐を呼び起こしているような形相であった。筆者は彼がプレイした曲を1つも知らなかったが、その中でも独特のアンセム的なトラックがいくつかあり、ものすごくシャープなメロディーや捩じれたリズムに乗せて、周りもほとんど見えない暗闇の中で踊るのは非常に気持ちが良かった。多くの捻りや接点を通過して、彼のロングセットはあっと言う間に終了。筆者はトボトボと階段を昇りクラブの外に出て、身の引き締まるような寒さの東京の朝の中、疲労しきったような気分になった。しかし、あんな疲れだったらまたいつでも体験したいものだ。
RA