Rabit - Sun Showers EP

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  • 日本を拠点とするレーベルDiskotopiaが新たなグライムの形へと接近している。「Sun Showers」のリリースは、そのことを如実に表している。元々はMau'linや自身の音楽をエスキーハウスと名付けていた頃のSlackkらによるハウスやテクノの影響を窺わせるプロダクションをリリースしていたことで知られるレーベルだった。昨年、レーベルはVisionistやArcticといった多種多様な一面を持つ音楽を発表していたが、ヒューストンを拠点とするRabitと契約を交わしたことは特筆すべき事件だと言える。伝統的なグライムをモチーフとして大胆かつアブストラクトに再編しなおすことで、この数ヶ月、評価を獲得してきたRabit。「Double Dragon」や"Satellite"(Keysoundからのコンピレーション『This Is How We Roll』へ提供したトラック)は、馴染みのある音楽をバラバラに断片化し、自身のスタイルのさらにコアな部分へと深く掘り進めるものであった。 「Sun Showers」では、これまでの作品に比べて若干ながら明るめのトラックを提案している。"Levels"には少なくとも終わることのない絶望感以外の何かがある。エネルギーがほとばしるスネアのシンコペーションと切り刻んだボーカルサンプルはHelixの隙間を活かしたビートを思い起こさせる。しかし帽子と手袋は手の届く範囲に置いておくべきだ。それほどに本作には極寒トラックが収められている。タイトルトラック"Sun Showers"で使用されているカットグラスのようなシンセは、ぐらぐらとゆれるベースラインの飛沫の間を用心深く転がっていく。Visionistの最近の作品のように、グライムを融解し霧へと変化させる研究をしているかのようだ。一方、"40 Below"では、不安定なボンゴとグラスを割ったかのようなパーカッション、そして巨大な重低音がもたらす冷気によりトラックは今にも凍り付いてしまいそうだ。最後になったが、"Black Bag"での冷徹な矩形波がビートレスの空間で嘆き声を上げる様はあまりにも残忍だ。しかしながら不思議と美しさがそこにはある。この感覚こそRabitがこれまでに証明してきていたものなのかもしれない。
  • Tracklist
      01. Sun Showers 02. Levels 03. 40 Below 04. Black Bag
RA