Native Instruments - Traktor Kontrol X1 MK2

  • Published
    Nov 1, 2013
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  • Released
    August 2013
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  • Native Instruments(NI)のフラッグシップ製品であるTraktor専用コントローラーの登場は4年前の時点では夢物語だった-この話を信じるのは難しい。しかし、NIのウェブサイト上のTraktor DJ用コントローラーのページを見れば、この4年でいかに急速にこの分野が成長してきたかが理解できるはずだ。現在Traktor専用コントローラーはマルチな機能のS4からリミックス用F1まで実に6種類が用意されている。 最初に発売されたシリーズ製品は2009年のX1だが、今回これがアップデートされMK2として発売された。ただし、オリジナルを使ったことがある人ならば、特に操作にとまどうことはないだろう。Traktor DJのワークフローへ忠実に対応するというコンセプトは保たれており、ブラウズやロード、ループやキューポイントの設定、テンポに沿ったトラックのトリガーやエフェクトのコントロールが可能となっている。X1は基本的に外部ミキサーかTraktor内蔵ミキサーにアサインされた別のコントローラーが行う実際のミックス(ヴォリューム、ゲイン、EQ、フィルター)へのアドオンとして開発された機材であるが、今回もその点に変更はなく、ミックス機能は追加されていない。 しかし、大幅に変更が加えられた部分もあり、たとえばデザインは筐体上の文字が少なくなってかなりシンプルになった。この変更によって全体的なデザインは向上したが、同時に何が実行できるのかいちいちマニュアルを参照しなければならないという問題が生まれている。これは文字表示がなくなった上に、新しい機能(テンポチェンジ)が加わったループエンコーダーでは特に大きく影響する。また、コントロールできるすべての機能を同時に視覚的に表示することが徐々に不可能になってきた現代において、X1 MK2がついにその限界を提示したようだ。しかし、幸運なことに小さなLCDディスプレイが2個搭載されたため、部分的にではあるが何がコントロールされているのかが視認できるようになっている。 LCDディスプレイに挟まれているのが新しいブラウズエンコーダーで、オリジナルでは2個だったものが1個にまとめられた。結果的にかなり小さい2個のボタンでブラウザからデッキへのアサインをしなければならなくなったため、既存のX1ユーザーはこの変更を良く思わない人もいるかもしれないが、エンコーダーがタッチ感応式に変更されたため、触れるだけでTraktorが自動的にブラウザ表示へと切り替わるようになったのは良い点と言えるだろう。これは非常に良く考えられており、DJブース内で簡単にトラックを検索できるようになった。 MK2の一番大きな変更点はタッチストリップだろう。近年、タッチストリップはあらゆる機材へ投入されているが、X1においてその導入の意味は特に大きく、この機材の機能性を大幅に拡張している。デフォルトではタッチストリップは2分割されており、直感的に左右のデッキをコントロールすることが可能だ。プレイ中はピッチベンド方式でテンポの修正を行い、ストップしている時はトラックのスクラッチが行える。また、シフトを押しながらタッチストリップを触ることで、ストップしているデッキ上で素早いトラック検索が行える他、タッチストリップ全体をひとつのデッキのコントロールに対応させれば、細かい操作も行えるようになる。 このタッチストリップによるコントロールはかなり便利で、Fluxモードと組み合わせればクリエイティブにリアルタイムなトラック操作を行え、また指を離せば瞬時にすべてを元に戻すことができる。タッチストリップを使ったデッキコントロール(ループエンコーダーのテンポ修正機能と組み合わせることで)は非常に実用的で、マニュアルでのビートマッチが自然に行える。これは特に通常のターンテーブルを使用していた人にはありがたい機能だろう。 このタッチストリップが先進的な部分は、デッキコントロールの他の操作も可能だという点に集約されており、指をタッチストリップ上に乗せながらループエンコーダーかエフェクトボタンを押すと、瞬時にループとエフェクト機能に対して使用することが可能になる。尚、いずれの場合もコントロールは一時的なもので、たとえば、タッチストリップにループのコントロールがアサインされている場合、ループはタッチストリップに触れている間だけアクティブになる(ループの長さを指の位置によってコントロールする)。この特徴から考えると、タッチストリップを使ったループはミックスというよりはライブパフォーマンス向きと言って良いだろう。また、このタッチストリップのトリガーは選択したエフェクトを瞬時にオンオフできることから、エフェクトでの使用の方がより効果的と言えるだろう。 さて、結局のところX1 MK2はDJセットアップに組み込む価値が十分にある機材なのかという点についての答えだが、「多くの人にとってはイエス」と言えるだろう。もしミキサーの他に機材を追加したいと思っているのであれば、タッチストリップが搭載され、マニュアルでのビートマッチが簡単にそして直感的にできるようになったX1 MK2はベストチョイスと言えるだろう。筆者はNIの最新のオーディオインターフェイス/コントローラーであるZ1と併用してロードテストを行ったが、このコンビネーションは非常に素晴らしく、また各ユニットのサイズも小さいことから、現場での対応性も高い。 尚、DJブースを離れても、優れたMIDIコントローラーとしても使用することが可能だ。タッチストリップは指を2本まで感知できるため、それぞれの接点からMIDI情報を送信することが可能だ。残念ながらMac上でX1をMIDIモードに変更する際にはいくつかの問題が発生したが、NIは既に修正に向けて動いているはずだ。全体的な評価としてはX1 MK2は素晴らしい機材と言えるだろう。良く考えられたアップデートが行われており、最新のTraktorと見事に調和している。 Ratings: Cost: 4.5/5 Versatility: 5/5 Build: 4.5/5 Ease of use: 4/5
RA