SDC - Correlation #1

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  • 意欲作となったスペースオペラを彷彿とさせるデビューLP『Welcome To Mikrosector-50』をリリースし、ベルファスト在住のJack Hamillは成功の道を辿ろうとしている。多くの意味で、先のLPはHamillの美学における到達点だった。物語性や、一見、冗談とも取れるようなじっとりとしたシンセファンク、狂ったようなDrexciya風エレクトロ、コズミックハウス、それ以外にも多くの要素が付随して取り込まれていた。SDC名義での新たなリリース1枚目となる本作はClone Royal Oakからとしては2010年の『Journey To The Core Of The Unknown Sphere』以来となる作品だ。「Correlation #1」は以前の作品に比べると様式として幅が狭くなっていおり、ここに収められたトラックはカテゴリーの境界がおぼろげなハウスのテンプレートに沿ったものだ(精巧なニューエイジなシンセが漂う"Petrichor"は例外だが)。Hamillに期待していたことかもしれないが、本作は火星の大陸で鳴っているハウスミュージックのようだ。つまり、豊かで色彩がはっきりしていて、奇妙かつ豪華なのだ。 "First Glance"や"Butterflies Of Malaysia"は本作におけるハイライトでゴージャスでパステルがかったトラックとなっており、柔らかなGファンクのメロディーと器用なコードワークによって導かれている。"Chemoreceptor"は若干、厳格な雰囲気だが、6分間の内にゆっくりと、しかし、しっかりピークへと昇っていく。もし収録曲の中から1曲だけ失わなければならない状況が仮にあったとするならば、その曲は、しっくりとくる名前が付いた"Familiar Terrain"だろう。他の曲と似たようなことをやっているが、それほど響いてこないのだ。これらのトラックはスムーズで音色豊かであり、心地よく解けていくようで、Floating PointsのEP「Shadows」に近い関係にある。そしてFloating Points同様、一番の弱点は、おそらく要領が良すぎる点だ。しかしながら、"Butterflies Of Malaysia"の終盤でくねくねとしたメロディが突如、挿入される部分については、それが弱点だと捉えられることはないだろう。
  • Tracklist
      A1 First Glance A2 Familiar Terrain B1 Butterflies Of Malysia B2 Chemoreceptor B3 Petrichor
RA