Fasten Musique Concrete Open Air

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  • 海外、特にヨーロッパでは、実力あるパーティーがレーベルを運営することは珍しくはないが、ここ日本では地理的な問題もあってか、世界的な影響力を持つパーティー兼レーベルは無いと言わざるをえない。しかし、近年になってその状況を打ち破るクルーがいくつか現れ始めていると感じる。その筆頭とも言えるのがFasten Musiqueだ。Fasten Musique Concreteはロンドンにて発足。日本では先日惜しまれつつ閉店したelevenを拠点に良質なパーティーを手がけ、レーベルとしてもトレンドを読みつつ常に新たな才能をピックアップし、現時点で2枚のヴァイナルを発表。間もなく新作EPのリリースも控えている。そんな彼らが主催する半野外パーティーが開催されるということで、ややハイプなイベントが多く、なかなか行く機会の無い新木場の大型エンターテイメントスペースageHaへと足を伸ばしてみた。 Photo credit: Ron Zakaria パーティーは、常時気温が30℃以上という、猛暑の続く東京でもとびきり過酷な日となった8/11に、ageHa駐車場の一角にFunktion-Oneシステムを持ち込んで作られた特設フロアにて行われた。フロアの後方にはバーやフードコート、南国のビーチを模した休憩所も備わっており、友人の一人は「まるで小さなマイアミみたいだ。」と言うほどであった。オープンを担当したのは平日の実力派パーティーBe Your FreakをオーガナイズするYasu。ミニマルハウスを中心とした堅実なミックスの中に、アグレッシブさが見え隠れする独特のスタイル。続いてFastenの仕掛人Yoshitacaが登場。クールでフラットな展開を保ちつつ、徐々にグルーヴ感を強めていくような選曲で、着実に観衆をフロアに引き込んでいた。両者とも直射日光が厳しい時間帯でのDJであったが、この日の流れを作る役割を確実に遂行していた。 Photo credit: Ron Zakaria この日は奥のプールバーでもテックハウス系のDJによるパーティーが行われていたが、昼の時点では特設フロアとの客の行き来はそこまで無かったように感じた。客が往来するのは酷暑に耐えかねプールの方へ涼みに行くときか、興味本位で覗きに来るときぐらいだったのだが、後半になるにつれて特設フロアに流れる人々もわずかながら増加していたようだ。一人目のゲストアクトIvano Teteleptaはラップトップと小型リズムマシンを操り、低音が効いたグルーヴィなライブを披露。モダンなディープハウスの中に、ブレイクビーツやサンプリングフレーズが黒い感覚で溶け込む、クールなB-Boy風の出で立ち通りのサウンド。2010年以降のディープハウス界隈でも随一の実力を堪能することができた。Hello?Repeatのオーナー、またはベテランのトラックメイカーとしても知られるDaze maximは今回DJでの来日。彼の持ち味である奇妙なセンスが感じられるミニマルから、裏の定番と言える往年のディープハウスまで、安定した選曲でフロアをコントロールしていく。相棒であるJan Krugerと比べるとやや意外性に欠けるとも思ったが、とはいえライトな遊び方を好む客層にもしっかりと渋めのテクノ、ハウスの魅力を伝える手腕は流石。3時間のロングセットでもブレの無い、貫禄のプレイでこの日を締めくくった。 広い東京であっても同系統のパーティーに何度も通っていると、会う人の半分が顔なじみという状況も珍しくない。しかしこの日は場所柄もあってか、普段行くクラブとはまったく違った客層、雰囲気があった。また、Daze MaximとIvano Teteleptaという、ディープハウスの影の実力者をageHaのデイタイムに招致するのも今まであまり無かった斬新な試みで、深く音に浸る人々と、音楽そのものよりパーティー感を重視するような客層が混在する、理想的なフロアが出来上がっていた。ナイトクラブという空間特有の楽しさもあるが、今回のようなパーティーが週末の選択肢に加わることで、シーンに新たな風を吹き込むことができるのではないだろうか。Fasten Musique Concreteの開拓精神を強く感じられるパーティーであった。 Photo credit: Ron Zakaria
RA