Mark Pritchard - Ghosts

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  • 時代精神という点で、Mark Pritchardは実に優れた感覚を持つプロデューサーだ。Harmonic 33およびHarmonic 313では古典的IDMを手掛けるいっぽう、Global Communicationの片割れとしてメロディックなアンビエントを手掛け、Steve SpacekとのAfrica Hitechではより雑食性の高いハイブリッド・ミュージックをプロデュースし、その他にもTroubleman、NY Connection、M. Meechamなど多数の名義を使い分けながら活動している。Africa Hitechではフットワークを援用していたので、Pritchard自身がフットワークに興味を示していること自体に大きな驚きはないものの、本人名義(過去に彼が本人名義でリリースしたのはただ1度だけで、その他にはリミックスがひとつあるだけだ)でリリースされるこの作品においてさえフットワークが導入されているという事実には驚きを禁じ得ない。 タイトルトラックで聴くことの出来るフットワーク・スタイルのドラムとチャンキーなベースラインはまさに弾丸のようだ。そこに埋め込まれたサンプルや巨大なベースラインはほとんど変化は起こっていないが、だからこそその精巧なビーツは輝きを増す。それでも、7分間のクラブトラックとしてはもう少し展開が欲しいところではあるが。そういう点では"Get Wyld"は過不足ない仕上がりで、その美しく且つ不気味なメロディはスリリングなベースラインや突き刺すようなスネアの中で沸騰している。しかし、トラップ調にピッチダウンされたヴォーカルは奇妙なチョイスと言わざるを得ず、スリリングなリスニング体験においてやや水を差す存在と鳴っている。 問答無用の楽しさに溢れた"Manabadman"はまちがいなくハイライトだ。ダブル・アップされたリズム、8ビット調のグリッチ、そして奇妙で柔らかなベースラインは無尽蔵のエナジーでバウンスしており、Spikey Teeをフィーチャーしたヴォーカル・ヴァージョンではダンスホール・テイストが加わってさらに楽しい仕上がりだ。Pritchardのテクニカルな技量はまさに他を寄せ付けないもので、そのスタイルのブレンドぶりも美しくまとまっているのだが、この「Ghosts」でのサウンドが本当のMark Pritchardなのかと問われれば、やはり疑念は拭えないところだ。
  • Tracklist
      A1 Manabadman feat. Spikey Tee A2 Duppies B1 Ghosts B2 Get Wyld
RA