The Mole - Caregiver

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  • カナダとベルリンを活動の基盤としているColin de la PlanteことThe MoleがWagon Repairからデビュー・アルバムをリリースしたのは今から5年前のことだった。早春にリリースされたそのアルバム『As High As The Sky』には彼らしい万華鏡のごときカラフルなディスコ・ループとハウスが溢れていた。KompaktやMusique Risquéeからクラブトラックの12インチをリリースし続けてきた彼にとって、このアルバムでの展開は驚きであると同時に実に調和のとれた声明でもあった。 The Moleとしては2作目となるこのアルバムは、昨年彼とKompaktのJon Berryが立ち上げたレーベルMaybe Tomorrowからリリースされた。ベルリンのWagon Repairスタジオで制作されたというこのアルバム『Caregiver』には、de la Plante流のサイケデリックなハウス/テクノ解釈が貫かれている。前作にあたる『As High As The Sky』と同様、その隙間を縫い合わせるような手法にはde la Planteらしいダンスミュージックへのカラフルなアプローチが根ざしている。"Jamais Que Toi"はまるで彼独特の湿度の高いディスコブレイクにどっぷりと浸かったかのようだ。"Our Time Has Come"にも同様の夏っぽさがあり、そのハンドクラップとさまざまなシンセ・フレーズはヒプノティックで液体的なグルーヴの中に溶け込んでいる。ほかにも、その催眠的な真夜中のヴァイブが映えるDial調のハウス"A Daily Affair"、頭がくらくらしそうなほどサンプルを敷き詰めたテックハウス"(When) Monkey Punches Dog"も出色だ。 いつものように、de la Planteは彼自身の作品をアルバムとして良く練り上げ、リラックスして聴けると同時にクラブでも機能するものを作り上げた。しかし、このアルバムを深いところまで聴き込んでいけばいくほど、前作『As High As The Sky』を耐久性の高い作品たらしめていたがっしりとしたグルーヴと耳に心地よい展開がこの作品には欠けていることが気になるはずだ。実際のところは、その異例の中毒性の高さこそこのアルバムが最も興味深いものに聴こえる瞬間だ。"Slow Blame"でのヒップホップ・ブレイク、カートゥーン・サンプル、静謐なシンセはまるでAphex Twinが『Selected Ambient Works 85-92』期に展開していたサイボーグ的なピロー・ミュージックを思わせる。アルバムを締めくくる"Come On Darlene"では奇妙なヴェルベット的手触りの脳内空間を展開しており、スローモーなグルーヴはゴージャスな眠りを誘うようなスペース・オデッセイ的シンセのなかでかすかに渦巻いている。全体的に見ると、このアルバムではパーティ・トラック的なトラックの大半よりもこうしたダウンテンポのトラック群の方がより強く印象に残る。
  • Tracklist
      01. Another Intro 02. A Daily Affair 03. Hey Miss 04. Jamais Que Toi 05. Slow Blame 06. Our Time Has Come 07. Interlude To Love 08. Carry On (We Must) 09. (When) Monkey Punches Dog 10. Come On Darlene
RA