Wen - Commotion EP

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  • DuskとBlackdownが運営するKeysound RecordingsはBeneathによる怒濤のごとき作品「Illusions」で2012年の幕を閉じたが、2013年の最初のリリースを飾るのはWenによるデビューEPだ。このWenやVisionistはBlackdownが提唱している"dark 130(ダークな130BPMトラック)"というコンセプトを体現する気鋭の若手だ。吹きさらしのようなパッド、陰鬱なメロディ、おびただしいサブ・ベースといったエレメントによって構成されるそのスタイルは初期のFWDやDMZを彷彿とさせつつ、それらよりもBPMをやや落としてグライムやUKファンキーの遺伝子をそのリズムに落とし込んでおり、その絶対に間違いのない組み合わせが新たな変化のための土壌を築いている。 現状のところ、Wenというプロデューサーのプロフィールはほとんど知られていないが、この4トラックに込められた強度、簡潔さ、独創性はまったく無視できない。"Commotion"と"Nightcrawler"でのハーフタイム・ビーツは明らかにグライムにおける最良のエッセンスに由来しており、重苦しくもどこか敏捷さを持ち合わせてもいる。"Nightcrawler"でのややスローなテンポはリズムのフロウをやや滞らせているが、グルーヴが軽めなぶんアトモスフィアの質量はかなり大きい。"Spark It"はUKらしいハウスグルーヴをやや滲ませながら、そのうねるようなベースラインはあきらかにYoungstarのグライムの決定版的名トラック"Pulse X"からの影響を感じさせる。EP中でも際立った存在感を放っている"Road"は悪魔的なほどに抽象化されたハーフタイム・ビーツとそのグライム的で厳ついオーケストラ・サンプルは奇妙で厳粛なムードへと煮詰められていく。少し聴いただけだと、少しスローすぎるしダンス・トラックとしてはあまりにも隙間が多すぎると映るかもしれない。しかし、ダブステップの初期がまさにそうであったように、Wenによって緻密に構成されたリズムにはUK伝統のダブル・タイム的感覚が根底に流れており、その感覚がリズムの隙間を見事に埋めている。
  • Tracklist
      A1 Commotion A2 Nightcrawler B1 Spark It B2 Road
RA