Cyclopean - Cyclopean EP

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  • Kraftwerkは1986年に制作活動をほぼストップしたが、先日過去の名曲を演奏したロンドンでのライブが大盛況であったように、彼らを取り巻く熱狂は今もってさめやらない。彼らと同じく70年代を通して活動し、現在も淡々とそのマテリアルを磨き続けているCanのふたり、Irmin SchmidtとドラマーのJaki Liebezeitとはまさに対照的と言ってもいいのではないだろうか。このCyclopeanはSchmidtとLiebezeitというCanのオリジナル・メンバーにSchmidtの長年のコラボレーターであり義理の息子であるJono PodmoreことKumo(彼はCan『The Lost Tapes』の長期間にわたる編集作業にも大きく関わっていた)、そしてLiebezeitとの数々のコラボレーションを行ってきたBurnt Friedmanを加えたプロジェクトである。Cyclopeanは近年他のどのカルテットよりも魅惑的な存在だ。 ビーツとテクスチャーを完璧に融合したモザイクのような"Apostles"からしてかなりの高水準だ。そこには、長年にわたって練り上げてきたかのようなスムーズな精緻さが潜んでいる。Canといえば、その抑制されたムードが特徴的であったが、これらのプレイヤーたちをバックに従え、とりわけクラシックな音楽的素養に長けたSchmidtは"Fingers"での電子音のフローのようにささやかな介入を見せるに留まっている。"Knuckles"でのディジェリドゥーのようなエフェクトはうっすらとしたエスニックさを匂わせるが、彼らの作品全体から感じられるのはやはりその「ルーツの無さ」であり、まるで空気中に漂うものをつまんで作り上げたかのようにも感じられる。最後の"Weeks"になると音楽はついに自由な呼吸を許されて輝きを放ち、溢れ出す。まさしく精巧で、これ以上無く成熟した作品だと言えよう。
  • Tracklist
      A1 Apostles A2 Fingers B1 Knuckles B2 Weeks
RA