Native Instruments - Z2

  • Published
    Jan 30, 2013
  • Released
    November 2012
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  • 数々のエフェクターと複数のデッキが搭載され、Native Instruments(以下NI)が長年に渡って誇るソフトウェア・インストゥルメントの開発能力が注ぎ込まれたTraktorは、エレクトロニックミュージックにおける推奨DJソフトと言っていい存在だろう。NIはスタンダードなDJミキサーを補完する(X1、F1)、またはそれに取って代わる(S2、S4)、数々のハードウェアを打ちだしてきたが、最新製品Kontrol Z2はそれ以上の存在と言え、伝統的なスタンドアロンミキサーにオーディオインターフェイスとTraktor操作が組み込まれている製品だ。 Z2は非常に頑強なイメージを与える。他のTraktorシリーズの製品と同様、艶のある黒いボタンや色鮮やかなバックライトボタンが頑強なメタル製筐体に組み込まれている。またノブ類は感触の良いラバーで覆われている。背面部の接続は非常にシンプルで、2チャンネルには共にRCAピンのフォノとラインのインプットが組み込まれ、その他に1組のRCAインプットと、1/4インチのマイクインプットも用意されている。この追加されているRCAインプットとマイクインプットを同時に使用することができないのは残念だが、便利な専用のトーンノブが用意されているため、サウンドを調整することが可能だ。 Z2はTraktorと併用する場合が多いはずだが、フォノ用プリアンプは非常に優れていると言える。非常にハイクオリティなアナログミキサーと比較しても、Z2のプリアンプは五分とは言わないまでも、明るく、パンチの利いたサウンドを生み出していた。アウトプットにはXLRとRCAがマスター用に、そして1/4インチのジャックがブース用として用意されており、前面部には1/4インチ、1/8インチの両方に対応するヘッドフォンジャックが配置されている。またメインのUSBポートの他にも2つのUSBポートが用意されているため、USBハブとしても機能する。 各チャンネルは最上部にフォノ/ラインの切替え用スイッチ、またアナログ入力かTraktor入力かを指定するボタンが配置されている。このボタンはTraktorとスタンドアロンのミキサーモードの切替えも担っている。ちなみにシフトボタンを押しながらTraktorボタンを押すと、Live Deckモードとなり、Traktorのエフェクターをリアルタイムでアナログ入力へかけることが可能となる。また3バンドEQは非常に優れており、その下にはTraktor入力にもフォノ/ライン入力にも対応しているローパス/ハイパスフィルターも配置されている。ただし、このフィルターの反応はやや遅いようで、ノブを回してからフィルターがかかりはじめるまで一瞬の遅れがあり、残念ながらエフェクトのタイミングにズレが生まれてしまっていた。その下にはA、Bボタンが配置されているが、これらはTraktorのエフェクターのトリガーとして使用する。 チャンネルフェーダー、そしてクロスフェーダーは素晴らしい感触だが、他の部分で問題を抱えている。まずフェーダー類のフェーダーカーブはあまり優れているとはいえず、ややタイミングに遅れを感じた。ちなみにクロスフェーダーのフェーダーカーブを最も急激な傾斜に設定しても(カッティング重視の設定)、逆側のチャンネルの音はすぐに聴こえず、フェーダーを逆側へやや多めに動かさなければならなかった。バトル系のDJの場合は、この反応性に満足しないかも知れない(これはビルトインされているInnoFader製クロスフェーダーの問題であり、この問題が生じているユーザーはNIのサポートへ連絡すれば交換してもらえる)。尚、クロスフェーダーにはリバーススイッチが備わっている。 Kontrol Z2はTraktor 2.6が同梱されており、ソフトとミキサーはシームレスに連携することが可能だ。ソフトのインストールも簡単で、PC内の既存のライブラリやキューポイントも問題なくそのまま移行され、また既にインストールされていたTraktor Scratch Proがアンインストールされたり、書き換えられたりすることもなかった。Traktorのライブラリは非常にシンプルに操作することが可能で、ミキサー上部のノブを使用してプレイリストを移動し、その下のボタンでデッキにロードする。各チャンネルにはMarco FXセクションが設けられており、ドライ/ウェットを操作するノブと、その下にエフェクトによって変化する各種機能を操作するためのノブが配置されている。Marco FXは1つのノブで操作できるマルチエフェクトだが、最も優れた新機能のひとつがプリ/ポストの切替えで、これはシフトを押しながらFX ONボタンを押すことで可能となる。プリモードでは、エフェクトはフィルターの手前でかかるようになり、ポストモードは、ディレイのようなエフェクトがフェーダーを下げた後でもかかるようにするため、サウンドが突然途切れないようにすることが可能だ。 Z2は本質的には2チャンネルのミキサーだが、TraktorのデッキC/D用のボリュームを操作できるノブが配置されているため、Remix Decksには最適な仕様となっている。またループやビートジャンプの作成及び操作用にプッシュボタン式のエンコーダーが各チャンネルに配置されている。尚、フェーダー上部には3ケタの7セグメント型の液晶ディスプレイが配置されており、Traktorのループの長さや他の情報を表示することが可能だ(これはZ2における唯一レトロな部分で、それ以外は非常にモダンである)。各チャンネルはキューポイント用、またはRemix Deckのサンプルのトリガー用として4つのバックライトボタンが用意されている。外部デバイス上ではなく、ミキサー本体のフェーダー付近にこのボタンが配置されているのは非常に便利だ。 Flux Modeはキューポイント間を移動したり、サンプルをトリガーしたりしても、トラックの時間経過がそのまま維持される機能で、専用のボタンがキュー/トリガー用のボタンの下に配置されている。スナップ及びクオンタイズモードにもオン/オフボタンが用意されている。またミキサー最上部の設定ボタンは、レイアウトやタイムコード、LED類のパラメーターをラップトップのディスプレイを見ることなく変更できるため非常に便利だ。またシンクモード、REL/INTモードの切替えスイッチも配置されている。 Kontrol Z2は優れたミキサーであると同時に、多用途なコントローラーでもある。SeratoユーザーにとってのRane TTM 57SLと同様、アナログレコードとデジタルを組み合わせて使うDJに向いている機種と言えるだろう。しかしZ2はRaneよりも数多くの操作と機能が備わっている。古いCDJを使用しているDJならば、Z2をシンクや優れた波形表示、Flux、クオンタイズなどの機能が加わったアップグレード機として考えることが可能だ。また様々な機能がひとつのパネル内にレイアウトされているにも関わらず、ごちゃごちゃした印象はなく、混乱することもない。X1にプロ仕様のDJミキサーを付け加えたかのような印象を与える機材と言えるだろう。 Ratings: 価格: 3.5/5 多用途性: 4.5/5 構造: 3.5/5 使いやすさ: 4/5
RA