Ena - Purported

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  • Enaが作る、ハイテンポでよろめくようなトラックは我々が普段慣れ親しんだドラムサウンドというより、蜘蛛の群れが素早く動き回っているような感触を覚える。そこにダブステップ・フレンドリーなローエンドが融合されると、それはもはや不穏と言ってもいいほどの感覚だ。その感覚こそ、彼のRA podcastを今年最も衝撃的で驚きに満ちたものにさせていたと言っていいだろう。 7evenから届けられたこの新作の2トラックで、Enaはさらにダブステップ的テンポの中での実験を押し進めている。"Purported"はダイナミックなベースラインと煙に燻されたようなコード展開が組み合わされている。パーカッシブなサウンドと調和のとれたサンプル群がにわかに色彩を帯びているが、それはまるで孤独に監禁された檻のなかから虹を眺めているような感覚にさせる。相変わらずEnaらしいというべきか、このトラックもまたリスナーをどこにも連れて行かない。その限定された空間にリスナーを張り付けにしたままなのだ。Bサイドにもまったく光は差し込まない。ドラムはドライかつ脆弱で、一撃ごとに崩れ去りそうなほどだ。不協和音の嵐のなかでベースラインは注意信号のように明滅している。広大で虚無な空間でひたすら迷い続けているような、なんとも言えない不安を帯びたトラックだ。
RA