Mario & Vidis - Restacks

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  • リトアニアのMario Basanov & Vidisは、そのデビューアルバム『Changed』において陰鬱なエレクトロニック・ポップと少量のクラブトラック的要素織り交ぜたサウンドの展開を見せていた。性急さとメロディックな要素を織り交ぜたミッドテンポのハウス・アンセムとなったアルバム・タイトル・トラックで、そのアプローチは見事に結実し、John TalabotやSoul Clap、Andre Lodemannらが提供したリミックスも華を添えていた。彼ら自身のレーベルであるSilenceからリリースされたこのシングルでは、彼らはBon Iver "Re: Stacks"のカヴァーによって再びダンスフロアーから距離を置き、先頃Sonar Kollektivからリリースされたコンピレーション『Secret Love 6』に彼らが提供したトラックも併録されている。 トラックの骨格は実にスカスカで、シャッフル気味でハーフ・テンポのドラム・パターンと硬質なシンセがぶつかり合いながら、やがてクラウトロック的で鋭いソロになだれこむ。このトラックに息を吹き込んでいるのはシンガーであるBarbarossaの存在で、そのオリジナルにおけるファルセットのメロディを、どこかスモーキーで、それでいて表現力豊かな(Everything But the GirlのTracey Thornを思わせる)アルト・ヴォイスに置き換えてみせている。Ameによるリミックスでは4/4ビーツが導入されることでクラブ向きになっているが、オリジナルの柔らかで毛糸の玉のような感触はそのままに、すべてが抑制されたトーンのなか催眠的なドラムが寄り添っている。正統派のInnervisionsらしいリミックスと言うべきで、9分間のあいだにあらゆる要素を包括し、寡黙にビルドアップしながらもそのクライマックスでは変調したアルペジオとHauschka的なピアノがパワフルに鳴り響く。その抑制ぶりが素晴らしい。
RA