Hennessy Artistry The ART OF Blending

  • Published
    Oct 29, 2012
  • Words
    Resident Advisor
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  • ヒップホップというジャンルは常に目まぐるしい激変を迎えている。新しいアーティストが出現し、ヒットを飛ばしては、去っていく。トッププロデューサーが目新しいサウンドを流行らせたら、他のプロデューサーもこぞって真似をし、ファンはすぐに飽きて、“next big thing”の登場を待ち構える。話題性を狙って目立つことをしようと必死な若手、そしてそれら若手が注目を浴びている間は蜜を搾取し、リスナーが目移りしたら放置する業界。この世界で、長年一定の存在感を放つことができるのは、ほんの一握りだ。 今年、『Professor @ Large』をリリースし、未だ健在であることを証明したアメリカのベテランプロデューサー/MCのLarge Professorは、その1人である。90年代には多くのヒップホップアーティストとの共演やプロデュースを行い、2000年代にはソロアルバムを複数リリースし、常にヘッズから多大なリスペクトを集めてきた。芯のブレないそのスタイルは、黄金時代の伝統を受け継ぎながらも、懐古的になりすぎず、現在でも多くの若い世代に影響を与えている。そして、去年から今年にかけて配信を行なったマンスリーシングルシリーズが反響を呼んでいる、日本が誇るDJ Krushも、90年代から世界中に刺激を与え続けてきたプロデューサーだ。進化と変貌を好むKrushは、革新的な音世界を構築しインストヒップホップの常識を覆し、エレクトロニックミュージックに計り知れない貢献を果たした。 Photo credit: Aoki 10月13日、ヒップホップPVではお馴染みのコニャックブランドHennessyが主宰する『Hennessy artistry』がAIRで行なわれ、この生ける伝説2人の共演が実現した。他にも、ビートダウンに傾倒したニューアルバム『Paradox』がダンスミュージックファンをも魅了しているgrooveman Spot、Low End Theoryなどビート系のイベントでもピックアップされ、世界に羽ばたきつつある若きビートメイカーBugseed、Hideo名義でDJ Krushの1998年のアルバム『覚醒』に参加していたDJ/プロデューサーSouthpaw Chopなどがメインフロアをガッチリ盛り上げ、ラウンジではDabo、Ben The Ace、Macka-Chinといったジャパニーズヒップホップのベテラン達がアツイ空間を創り上げた。 日付も変わり、grooveman Spotがヒップホップからハウス/ビートダウンまでを汲んだ選曲で十分にメインフロアを暖めた頃、DJ Krushが登場。ヒップホップの名曲がどんどん飛び出てくるDJプレイに客は狂喜乱舞の大興奮。ただの繋ぎに落ち着かない、卓越したスキルとショーマンシップで、圧倒的なDJプレイを見せた。そして登場したLarge Professorはマイクを握り、Krushとともに自身の名曲「Looking at the Front Door」を披露。客の盛り上がりはピークに達した。そして始まったLargeのDJタイムでは、彼らしいヒップホップからファンクやソウルまでを幅広くセレクトしたセットに、時に自身のフリースタイルも乗せ、ベテランらしい余裕と遊び心が感じられるプレイを見せた。なんと、最後にはサプライズで若手日本人ラッパーOMSBが急遽参加し、フリースタイルセッションを行なう場面も。そして、後に続いたBugseedのDJ中もフリースタイルをするLarge。若手アーティストを支える良き先輩としての彼の人柄が表れた瞬間であった。国境を越え、世代も越え、様々なスタイルを派生させ、これからもヒップホップカルチャーのアーティスティックな一面は、水面下で着実に繁栄を続けることに確信が持てるイベントであった。 Photo credit: Aoki
RA