Red Bull Music Academy Bass Camp 2012

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  • Red Bull Music Academy(以下RBMA)は、1999年にベルリンを皮切りに、これまで世界各国の都市をツアーとしてまわり、昨年はスペイン・マドリードで、来年の4月にはアメリカ・NYで開催される音楽アカデミーとなっている。去年東京にて開催される予定だったRBMAは、震災の影響でキャンセルとなり、それに伴って始動されたのが「PLAY,JAPAN!」だ。音楽の持つ力で人々にインスピレーションやパワーを届けようというコンセプトのもと、始動したこのプロジェクトの集大成として、このたび9月14日(金)から17日(日)にかけて開催されたのが、RBMAの体験版であるBass Campだ。スタジオ(作る)、レクチャー(学ぶ)、そしてイベント(遊ぶ)というアカデミーの持つ3つの要素を再現しており、今回開催地となった宮城県仙台には、日本全国から選ばれた合計20名のアーティスト達が集結した。14日初日のプログラムでは石巻市にてレクチャーを体験し、仙台市卸町のシェアハウスTrunkで日々のスタジオワークを、そして15日には市内のクラブADDにてイベントが開催されるという、音楽においてのコミュニケーションが行われた。そして最終日17日(月・祝)には、 卸町にあるウェアハウス「ハトの家」を貸し切ってのフリー・パーティーが開催された。日本では稀であるウェアハウスでのフリーパーティーに足を運んだ。 最終日のフリー・パーティーは15時にオープンし、仙台を拠点にするDJ Sisinobuからこの日のイベントが開始。倉庫内は、がれきアートをはじめ、White Lightによる重厚感のあるサウンドシステム、そしてHIKARIASOBI CLUBによるDIY感たっぷりのオーガニックなライトニングが会場を包み込んでいた。DJ Sisinobuの次に登場したのが、最近東京から仙台に拠点を移したDJ/プロデューサーのgrooveman Spotだ。JBのエディット・チューン、グルービな4つ打ちサウンドが会場を温かく包み込み、日が沈むにつれディープなハウスサウンドを展開していった。最後にIshの"Don't Stop"というクラシックなディスコ・チューンでセットを終え、DJ Mu-R、MC Hunger、DJ Mitsu The Beatsの3人から成るヒップホップ・グループGagleにバトンタッチ。DJ Mu-Rのスクラッチ・パフォーマンスに続いてMCのHungerとDJ Mitsu The Beatsが登場。日本発のヒップホップ・レーベルJazzy Sportに所属する彼らは、自身のオリジナル・トラックをはじめ、Mitsu The BeatsのMPCプレイにHungerがフリースタイル・ラップを行った。また、DJ Mu-Rのの何千何万といったレコード・コレクションの中から2枚をピックアップし、それにHungerがGagleのオリジナルトラックのリリックを載せるという面白いパフォーマンスを披露。「滑舌の良いMC」と自ら言うように、彼の美しくリズミカルなライムを聴いた会場の盛り上がりは一気にヒートアップしていった。パフォーマンスの終わりには、震災後に東日本大震災チャリティーソングとして話題となった「うぶこえ」を披露し、このグループの拠点でもある仙台に対する熱い思いと、会場に来ていた地元のオーディエンスとの思いが一体になり、温かい雰囲気となった。   Gagleの後に登場したのは、アメリカ西海岸を拠点に活躍する日本人ラッパーShingo2。日本人スクラッチDJであるA1との共演で、彼のスキルフルなDJスクラッチにShingo2が、クラシックアルバム『400』の作品をはじめとする数々のオリジナルトラックを披露。英語と日本語を巧みに操るラップで会場のお客さんを虜にしていった。最後には、Shingo02とHungerがコラボレーション作品「革命はテレビには映らない」を披露した。この夜のラストを飾ったのは、日本のヒップホップ・シーンの第一人者といっても過言でないDJ Krush。今年で21周年を迎える彼は、ベース/ビートミュージックを中心にしたディープなセットで重鎮としての威厳を放っていた。今回のBass Campの集大成として開催されたこのイベントは、仙台、日本、そして世界をつなぎ、音楽を通してコミュニケーションを行うというアカデミーの一面を覗くことのできた、そんな一晩であった。
RA