Sam KDC - Symbol #8

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  • ロンドンのSam KDCは彼が心を打つ痛切なメロディを作れる才能を持っているという事実をこれまでも何度も何度も証明してきた。そんな彼はドラムンベースのプロデューサーたちにより多様性を促すASCのSymbolシリーズにぴったりの存在だと言えるだろう。前回・前々回とKDCがSymbolシリーズに登場した時はなんとも直球で濃密なドラムンベースだったものの、それらはアブストラクトさを含みつつ強烈なキックドラムを携えたものだった。 KDCの手掛けるトラックは時折甘ったるさと感動のギリギリの部分で逡巡しているようにも思えるのだが、この"Symbol #8.1"ほどその2つが鬩ぎあっているトラックはこれまでなかったはずだ。8分間にわたってスムーズなデジタル・パルスに埋め尽くされたこのトラックは、流麗なピアノと胸を打つヴァイオリンによって彩られる。そう、ヴァイオリンだ。それでも、このトラックを貫く繊細さがヴァイオリンのクセの強さを和らげており、プラスチック的なパーカッションと鈍く光るストリングスの質感が織りなすインタープレイも興味深い。これもリスナーによっては評価が分かれるかもしれないが、さまざまなサンプルのテクスチャーで埋め尽くされた3分間のアンビエント・インタールード"8.2"もなかなか興味深い。コードが潮の満ち引きのように寄せては返す3曲目(EP中で最も長い)のトラックはもっともとっつきやすい。
RA