Trevino - Indulge

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  • ドラムンベース界隈のヴェテラン勢のなかで、Marcus Intalexだけが唯一ハウス/テクノやエレクトロへの接近を見せている。Marcus IntalexのTrevinoプロジェクトではハーフ・テンポのアシッド ("Tweakonomics") からトンネルを黙進するようなテクノ ("Derelict")、より抑制された ("Juan Two Five") まで、さまざまなタイプのリリースを展開している。そこではまるでテクノは彼にとってまったく目新しい、光り輝くものに映っているかのようであり、彼はあらゆる方向性を楽しそうにトライしているように見える。結果として、それまでのMarcus Intalexらしい個性が失われてしまうかもしれないというリスクははらみつつも、あらゆるスタイルや技法に対する彼独特の対応力の早さが浮き彫りになって見えてくるのだ。 Marcus IntalexのTrevino名義による最新シングル「Indulge」はAppleblimのレーベル、Apple Pipsから届けられた。タイトル・トラックは膨らみのある、筋肉質なエレクトロであり、すべてのサウンドが20年ものキャリアを誇る彼の完璧な技巧によって裏打ちされている。それでも、リスナーによってはあまりにもあからさま過ぎるオマージュだと感じてしまうかもしれない。そのフォーミュラの解釈があまりにも完璧であるため、その隙間からこぼれ落ちるようなフレッシュさに欠けているというきらいもないわけではないのだ。 その点、"Under Surveillance"ははるかに興味深い仕上がりだ。ドラムンベース直系の分裂症的なアトモスフィアが支配するオープニングから、DMZあたりを思わせる、ストレートでありながら中毒性の高いステッパーズ・リズムへと導かれる。その集中力の高さは見事なもので、そこにはパンチの効いたエレクトロ(それはあまりにも安易だ)や4/4リズムへ寄りかかることもない。そこにあるのは、ひたすら不穏なムードであり、ベースラインが淡々と地を這い、ハイハットがその上で整然と刻まれているだけだ。
RA