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  • ニューヨークの新興レーベル、UNOは設立1年目にして怒濤のリリース量を展開している。正直に言えば、私自身も彼らがこれまでどれくらいの数の12インチをリリースしたのか把握できていないくらいだ。Jacques Greeneのスムーズなデジタル・ハウスからTwilite Toneの捩じれたシカゴハウス・トリビュート、Fatima Al Qadiriが手掛けるGenre-Specific Xperienceによる孤高のベースサウンドまで、UNOは既存かつ特定のアンダーグラウンド・ダンスミュージックにコミットするというよりは、むしろそれらをすべて掬いあげたうえでまとめてひとつのバスケットの中に放り込む。 だが同時に、UNOは毎回驚くべきリリースを重ねながらも、彼らはこれまで無秩序でワイルドなタイプの作品はリリースしてこなかった。知られざる異界のサウンドを紹介するという、彼ら独特のA&R方針の表れだろう。そこで今回届けられた12インチは、Hype WilliamsのライブメンバーとしてUnsound New Yorkに出演し、強烈なプレイを披露した辣腕ドラマーGobbyによる奇妙きわまりない4つのテクノ・トラック。UNOが言うように、実に生々しいリアルさを持った作品だ。 Gobbyのサウンドは、まるでドロドロとした発癌性物質まみれの水から抜け出てきたかのようなムードを醸し出し、どこかVillalobosとDettmannを掛け合わせたような質感もあるのだが、この彼のデビュー作となる「New Hat」では実に奇妙なかたちでそれらがミックスされている。"Viewing HRS (ZZZ)"はその冒頭こそテックハウス調だが、シンセ・ラインがギクシャクとしたシーケンスに放り込まれると途端にグルーヴは捩じれはじめる。Ostgut Ton諸作にも近い印象を持つ"Seagate"では爆発と収縮が連鎖反応のように繰り返される。"Blankface ATM"は性急なテンポのブリーピーなジャック・トラックで、もしShedの未発表トラックだと言われてもうっかり信じてしまうだろう。EPの最後を飾る"/U\"はまるでThrobbing GristleとVillalobosの『Alcachofa』のあいだに生まれた私生児のようだ。実に生々しく冷徹で、過激さを秘めたトラックだが、リスナーの鼓膜に楔を打ち込むようなそのサウンドは奇妙な知性すらも覗かせている。
RA