Boo Williams - Moving Rivers

  • Share
  • 長いブランクを経て、ようやくシカゴのヴェテランBoo Williamsが強力なアイデア満載で戻ってきた。この「Moving Rivers」の両サイドには、非常にユニークでクレバーな個性が横溢している。しかし、そのユニークさとクレバーさのせめぎ合うさまはぶつかり合ったり立ち止まったり、はたまたシークエンスの中で偏ってみたりと、実に多彩な表情を見せるのだ。 タイトルトラックでは、のっけから様々なアイデアが盛り込まれすぎて飽和しそうになっている。まず耳に飛び込んでくるのはキャラメルのようにスムーズなベースラインだが、そこからさらに堂々としたパーカッション、小刻みなArpシンセ、揺れるヴィブラフォン、煌めくシンセがはじけだす。それぞれのサウンドこそシンプルな表情なのだがそれが渾然一体となったとき、実に素晴らしいグルーヴを生み出すのだ。 "Peaking Point"は典型的なピアノ・ハウスだといえ、ベースがトラック全体を力強く押し上げている。周期的に高域で鳴らされるシンセ・キーはなだらかでスピードの出るハイウェイでときたま出くわす微細な段差のようでもある。そこに組み合わされる子供たちの合唱ハーモニーのようなサンプルはかなりユニーク。ここにはいわゆるレトロ調のサウンドはほとんど無いといっていいが、それは大した驚きではない。というのも、ハウス誕生の時期に時を同じくして生まれたWillie GriffinことBoo Williamsという男にとってはおそらく過去の歴史を単純に繰り返すことにたいしてさほど興味を持っていないのだ。彼にとってこのEPはハウスをより良いものにし、未来へ押し進めるための意志の表れでもある。
RA