Auntie Flo - Future Rhythm Machine

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  • グラスゴー出身のBrian D'Souzaによるプロジェクト、Auntie Floのアフロハウスとトライバル要素をエスニック調に見せかけるアプローチに対し、個人的には危うさを感じていた。しかし、このリリースに先駆けてリリースされていたAuntie Flo名義の作品では明らかにギミックがそぎ落とされつつあり、私が個人的に感じていた彼のアプローチにおける危うさもこのアルバム『Future Rhythm Machine』ではすっかり解消されてしまった。 33分の長さに収められたこのアルバムにおいて、D'Souzaは先述の既発シングルの延長線上にある作風を展開している。ベース・ヘヴィーでビーツの隙間を埋める小気味よいストリングスに彩られた"Haven't Got Any Body"はまずまず予想通りといったところだが、Mamacitaのヴォーカルを交えた"La Samaria"ではUKらしいシャッフル感覚とこれまたUKらしいベース使いがうまくバランスされている。Crazy Couzinsを70年代後半っぽく仕立てたような、メロトロンを多用した"He Makes the People Come Together"のようなクラブトラック的な曲もありながら、そこはアルバムということもあってか、もの悲しいストリングスが印象的な"Can I Have Him"やアルペジオ渦巻く"Yllw Fllw"といった心憎いインタールードも効果的な存在感を示している。 いわゆるベース・ミュージックという括りで言うならば、このアルバムはかなり親しみやすい部類の作品だろう。アルバム終盤の"Futurismo"で降り注ぐサブ・ベースは強烈な一撃というよりは、やさしく包み込むような趣だ。こうした親しみやすさこそ、Auntie Floの持ち味だと言ってもいいだろう。アルバムのハイライトでもあるトラック、Pittsburgh Track Authorityを思わせる哀調を秘め、ストリングスとパーカッションのインタープレイが効いている"Train"をダンスフロア直撃のキラートラックと定義するのか、それとも心地よいヘッドフォン・ミュージックと定義するのかについては私は幾分決めかねるところもあるのだが、ともあれこのアルバムの大半が心地よいリスニングに耐え得る質の高さと問答無用にダンスさせるパワーを同時に秘めていることは間違いないだろう。
RA