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  • ハウスとディスコの本質的な違いとは、いったい何なのだろう?デトロイトのアンダーグラウンド・ヒーロー、DJ Dezとしても知られるAndrésの最新作にして彼自身が立ち上げた新レーベルLa Vidaの1作目となる本作で、彼は率直にハウスとディスコのあいだを行き来し、その堂々たる一貫性を見せつけている。 "Drama Around the Corner"はふんだんなサンプルに彩られたグルーヴィなトラックで、威圧的でありながらも優美なドラム・ループが敷かれ、ソウルフルなヴォーカルやストリングスがヴァイナルのノイズの奥から立ち上ってくる。壊れそうなトリッキーさとスムーズさが見事に同居したトラックだ。いっぽう、"Jazz Dance"はまさにそのタイトルに偽りなしといった趣のトラックであり、のっそりとしたアコースティック・ベースはPaul Chambersあたりの見事な技巧を彷彿とさせ、クールでブルーなフェンダー・ローズのメロディがその下をすり抜けていく。 しかし、注目すべき圧巻のトラックは本作のタイトルトラックである"New For U"だ。今年、このトラックを避けて通るのは不可能と思われるほどの存在感を持っていると言ってもいい。クランチーで伸び切ったアナログ・テープのようなグルーヴがごろごろと転がっていくその様は、かつてのLarry Levanのヴィンテージ・ミックスにも匹敵するほどの暖かでファジーな感覚を想起させる。70年代後半のSalsoul作品を思わせる柔らかな鍵盤の音色はグルーヴに付かず離れずのまま寄り添う。そして、その見事なストリングス・パートについて触れないわけにはいかないだろう。堂々たるスイープをみせるそのストリングスはよどみのないディスコ的快楽性のなかでスウィングし揺らぎ続ける。過去と現在の間に横たわる空間のどこかから拾い上げたような、見事な心地よさを持つこの"New For U"は生まれながらにタイムレスな性質の作品というべきで、それがハウスであろうがディスコであろうが何の問題もない。
RA