Bass Clef - Reeling Skullways

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  • 2006年にスタートしブリストルの音楽シーンの活性化に努めてきたレーベルPunch Drunkから、アルバムとしてはGuido『Anidea』以来となる本作がBass Clefの手により届けられた。全編を通してイーブンキックに裏打ちのハイハット、そして2拍と4拍に加えられたクラップやスネアドラムで形成されており、以前、本誌の特集にもなったハウスミュージックへの接近を想起させる。しかしGeorge FitzGeraldが語った様にBass ClefことRalph Cumbersもまた、ハウスミュージックやフォーミュラ化したダブステップ(もしくはベースミュージックと呼ばれているところのもの)を目指しているのではなく、自身の感性や経験に基づいた良質なダンスミュージックを作ろうとしているのではないのだろうか。 Brian AldissのSF小説『Barefoot In The Head』の一節から引用し名付けられた『Reeling Skullways』(アルバムジャケットのデザインも同小説に登場するものになぞらえている。)における特筆すべき点の1つとして、サンプリング音の使用を控え、可能な限りシンセサイズしたハンドメイドなサウンドを用いていることだ。昨年、彼はセルフレーベルとしてMAGIC + DREAMSをスタートさせているが、媒体としてカセットテープを採用し、膨大なアナログ機材から繰り出された音声を自らの手でテープへと録音しており、そんな彼ならではの姿勢がこのアルバムにも表れていると言っていいだろう。 特筆すべきは"Walworth Road Acid Trapdoor"や"A Rail Is A Road And A Road Is A River"でのベースラインの展開や緩やかに変化していくリズムや、"Suddenly Alone Together"の徐々に厚みを増していくシンセ音が生み出すサウンドのうねり、そして各曲に散りばめられた膨大な種類の効果音だ。それらの音を追いかけていると彼自身が機材のツマミやフェーダーを動かしている瞬間をはっきりと感じとることが出来るだろう。様々な音源をシンセサイズし、エフェクターをかけることによってループミュージックであることを忘れさせるような非常にカラフルな構成となっている。 ダブステップというよりもむしろハウスミュージックとしてカテゴライズされるであろう本作であるが、Ralph Cumbersによる巧妙な手さばきにより、単にハウスミュージックと言ってしまうには一筋縄にいかないサウンドで満ち溢れている。
  • Tracklist
      01. Keep Hoping Machine Running 02. Walworth Road Acid Trapdoor 03. Hackney – Chicago – Jupiter 04. Embrace Disaster 05. Electricity Comes From Other Planets 06. Stenaline Metranil Solar Flare 07. Suddenly Alone Together 08. A Rail Is A Road And A Road Is A River 09. Ghost Kicks In The Spiral
RA