- ひたすら穏やかな波に身を委ねるようなパッドの音色とその余韻。Joe McBrideの「Broken Promises EP」を聴き終えた後にリスナーの心の中に残る感触はまさにそれだろう。そのタイトルトラックの冒頭では、燻った灰色の波がじわじわと侵食し、弱い太陽の光のような火花がその滑らかな表面をなでてゆく。同様に"Memories of Love"でも短い時間軸のなかに余りあるようなエモーショナルさが詰め込まれ、控えめながらも力強いクライマックスへと導かれると、何度も聴き返してみたい気持ちにさせられるはずだ。
"Why Don't You"は全体的に懐古趣味的なところがある曲で、R&Bっぽいヴォーカルサンプルを回転するキャンバスに塗り付けて、そこからはじき飛ばされるディテールをランダムなインターバルを挟むごとに強調している。その手法は昨年彼が手掛けた"Viewpoint"ほどは成熟していないかもしれないが、そこに潜む意図はおそらく同一線上にあるものだろう。個人的にこのEPで唯一注文をつけるとすればコンガの音色があまりに明るすぎで悪目立ちしている"Knowledge"というトラックだろうか。それを除けば、全体的にSynkroらしい荒涼とした緊張感のあるサウンドスケープと、それとは相反するような親しみやすさを同居させた素晴らしい仕上がりの作品となっている。