qodibop - become color

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  • なにかと東京の引力に引っ張られがちな現在の日本の文化状況のなかにあっては忘れられがちだが、日本の地方に散らばる各都市は人口や地域ごとのGDPなどに沿って見ると実はそれぞれの都市が1個の国にも匹敵する規模を持ち合わせている。東京以外の都市から何かを発信しようとする場合、こうした事実に意識的であるかどうかという点は大きな違いを生み出すと思うのだけれど、そのなかでも90年代以降継続的に興味深い動きが見られるのが札幌という土地だ。Precious HallやTha Blue Herbといった人々は、東京に対する憧憬や卑屈な対抗意識もなく、ただひたむきな透徹した姿勢で自分たちの音楽とそれらが鳴る場所を築きあげてきた。こうしたサッポロ流儀のインディペンデント精神というべき系譜に新たに名を連ねているのがSYNAPSEというレーベルだ。 レーベル・オーナーである吉田龍太氏のもと、2006年に立ち上げられたSYNAPSEはshop (PROVO)、パーティ、レーベル、ラジオと4つの業務を軸にしながらそれらを音楽で繋げていくという、実に自由度の高い活動を展開している。吉田氏がSYNAPSEを立ち上げる際ケルンのKompaktのレーベルとしての在り方に影響を受けた(札幌の人口190万人に対し、ケルンはその半分近い100万人程度)と語るとおり、エレクトロニック(ダンス)・ミュージックの定型にこだわらず、自分たちの手の届く範囲でリラックスした姿勢をキープしたまま自然な音楽の広がりを志向しているあたりはたしかにKompaktにも近いムードを放っている。 SYNAPSEより新たに届けられた札幌の3ピース・インスト・デュオqodibopによるセカンドアルバム『Become Color』は実にシンプルでありながら淡く豊かな色彩を滲ませていくような、独特な魅力を持った良質なミニマル・ロック作品だ。1998年に本山文朗 (guitar)、飯岡徹 (bass, sampler)、斉藤誠人 (drums)の3人よって結成されたqodibopは、生楽器の演奏を軸にサンプラーやシンセなどのエレクトロニクスを取り込むスタイルで他の誰にも似ていないグルーヴを追求してきたのだが、このアルバムはこれまでの活動の集大成であると同時に、未来へ向かおうとする推進力に溢れた仕上がりとなっている。スローにじわじわとビルドアップする"slow wave"にはじまり、抑制されたトーンで統一されながらもミニマルな肌触りと道産子らしい適量のドープさが心地よくブレンドされた全11曲。
  • Tracklist
      01. slow wave 02. warm shake 03. swing paint 04. outline draw 05. turn on 06. stripe 07. puzzle 08. fit snea 09. calm force 10. hitogoe 11. film
RA