Akkord - AKKORD001

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  • 謎めいたレーベルから届いた匿名リリース。三角形がデザインされたアートワークも興味をそそるこの1枚はマンチェスター産。個人的にはおそらくSynkro周辺の人物によるものではないかと踏んでいるが、真相はいかに。ともあれ、これを手掛けているのが誰であろうと、その中味はSynkroの極めて美しいビーツとはひと味違う気もする。このAkkordはよりテクノ的なクールさがはっきりと感じられ、その3トラックはまるで手術用の金属板やきらきらと光るグラスで作られたかのような質感を持ち合わせている。 そうした特徴がもっともわかりやすい形で提示されているのが"Back and Forth"というトラックで、LFOを吸い上げてしまうようなドラムマシーンのグルーヴはどこかObjektの"Cactus"を思わせるところもあり、スタブ的に使われるヴォーカルサンプルは最近のAddison Grooveっぽくもある。とりたてて新しい要素はどこにもないトラックであるとはいえ、その堂々たるグルーヴや構造は十分印象的だ。 他の2トラックはより特徴的で、オールドスクールな匂いのするダイアローグの断片をダブステップ的なムードにうまく落とし込んでいる。"Renewal"はベルリンの暗い片隅に置き忘れてきた古いTempaスタイルといった趣で、不穏なコードに彩られたLFOスタブと平坦で歪んだ質感のスネアが砂利のように叩き付けられている。同じような壊れた質感のスネアがほかのドラムサンプルもろとも崩れていき、どこかロマンティックでもあり優美でもある変わった音色のメロディが荒れたテクスチャーと絡み合う"The Drums"における膨れ上がるようなロマンチックさは格別だ。このトラックにおけるオールド・ダブステップとテクノの交差具合はとりわけ興味深い。サウンドデザインにおける配慮も素晴らしく、この12インチは注目に値する1枚となるはずだ。
RA