既に多くのメディアが取り上げてきている通り、Ben UFOことBen Thomsonは昨今では珍しくプロデューサーとしてではなくDJとしてそのキャリアを築いてきた。何が彼を現時点にいたるまで引き上げてきたのだろうか。レーベルHessle Audioの運営、そしてそのパーティーを行っているFabricを中心としたDJ、Rinse FMやSub FMといったラジオでのパーソナリティーとしての活動が多大な影響を及ぼしてきたのは想像に難くない。またそれらに伴うミックスCDのリリースも彼自身の音楽性を多くの人々に広く知らしめてきている。しかしレーベルを共同で運営しているPearson SoundやPangaerがそのプロダクションにおいて自身の音楽性を注入し発表しつづけ、高い評価を得てきた一方で、第三者が作り出した音源を使用するDJという行為において、Ben Thomsonという「個」がどこまで、またどのようにして反映されてきているのか、またどういった展開を今後見せていくのだろうか。情報過多な環境にオリジナリティや一意見が埋没しやすい趨勢において、どのようにして自身の活動を見い出しているのだろうか。そこで今回のインタビューでは、特定のジャンルに関する質問は避け、DJという行為や彼の活動に関する質問を中心に現在、彼を、ひいては誰しもを取り巻いている状況に対する意見を聞きだすことによって、彼のパーソナリティに迫った。ここにある質問はおそらく、多くの回答の仕方があるものだが、彼が選ぶ言葉からは、結果として非常に謙虚で自分自身に対しても客観的な一面を持ち合わせたBen Thomsonを感じとることが出来た。

あなたのパブリックイメージについてどのように思っていますか？そのイメージはあなたのDJ活動にどのように影響しているでしょうか？

ミュージシャンに対して公衆が抱く人格というのは、音楽の受け取られ方を歪めるんじゃないかって、もともととても強く感じていたんです。そして、それによって音楽そのものから遠ざかってしまうネガティブな過程になるんじゃないかって。でも最近では、プロとしてDJをしたり、音楽をリリースした経験のおかげで、音楽で働いていく上で、そういったことはごく自然で避けられない一面なんだろうって感じてますよ。音楽が人々に表出する方法っていうのは、どうしたって、人々がその音楽を経て体感する方法に影響を与えますからね。たとえ音楽プレス関連の接触を全て避けて、可能な限り匿名で活動したとしても、その音楽について議論にされることがあったり、話し合われることがあるでしょうね。

僕の場合、ソーシャルメディアを使って音楽プレスとやり取りするとき、自分自身に対して可能な限り素直であろうと努めてます。自分が自然に感じていないのに自分に対する期待やそのイメージに沿わないといけないって感じたくないし、プライベートな時間での自分と吊り合ってないようなイメージを作り上げることには興味がないんです。

どのようにして、音楽制作をするのではなく、DJ活動に専念することになったのか教えてください。

DJ活動に専念するようになったのは意識して決めたことじゃなかったし、プロとしてDJをするつもりも無かったんです。ただ、様々な文脈、ラジオやクラブ、イベントのプロモーターとして長い期間やっているだけ。他の仕事を続けるのには忙しくなるレベルに達するまで僕のキャリアが少しずつ形成されただけなんですよね。いつかは音楽を制作してみたいとおもうけど、現段階ではDJ活動を発展させ続けることにもっと献身したいと思っています。

プロデューサーとしてではなく、DJをする時に表現できることがあると思いますか？DJとしてでしか表現できないことはなんでしょうか？

それぞれ違いますね。でも緊密に関係しあっているアートフォームです。両方ともに含まれている多くのスキルは転用可能だけれど、DJとプロデューサーでは全く違ったものを達成できると思う。DJはお客からの瞬時のフィードバックやその時点におけるイベントのバイブスにより焦点を当てているけど、一方でプロデュースは音楽がひとつのかけらとして後にどのように機能するかを多くの異なった文脈において想定することなんじゃないかと思いますね。

DJを2つの行動、選曲とEQを含むミキシングに分けるとするのであれば、これらの過程において具体的にあなたが何をしているのか教えてください。これらのほかにDJにとって重要な要素があると思いますか？

僕にとっては、選曲のほかでDJにおけるもっとも重要な面は、曲と曲をつなげることでお客にとってちゃんと意味を成すように、自分がプレイしている曲を可能な限りしっかりと聞き続けることですね。もし僕がDJ時に何をしているか、どのようにミキサーと相互に影響しあっているかを正確に見てみたいなら、どれでも良いのでBoiler Roomで録画したセットを見てもらうのがとても良いと思います。

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あなたは過去のインタビューでヴァイナルを好んで使うことを言及し、セラートはユーザーにBPMや波形など視覚的な情報を与える一方で、ヴァイナルを使うとそれらを直感的に捉えなければならず、そのことが結果としてDJに良い影響を及ぼしていると述べていました。ここで述べられている良い影響について、これまでに当てはまる経験がありますか？

こういった事柄はとても一般的にしか話せないですけど、僕はこれまで多くの異なったフォーマットを使って素晴らしいセットをプレイする人を見てきました。僕はどのフォーマットが本質的に優れているというような話は信じてないですけど、異なったフォーマットは異なった手法を促すと思っています。

何を使っているかによって、どのように音楽がオーガナイズされるのか、という点でそういったことを良く考えますね。ヴァイナルをプレイするなら、持って行くレコードバッグの大きさに制限されるでしょうし、可能性として考えられるのは、持っていった曲についてしっかりと熟知しているということでしょう。もしラップトップでパフォーマンスするなら、ハードドライブに入る音楽の容量にしか制限されないので、時として、その選択肢の膨大さと柔軟過ぎる点がかえって不自由にさせることがあるでしょう。結果としてセラートやトラクターを使ってうまくDJをするには、しっかりと統制されている必要があると思います。僕は長時間プレイするときは普段、習慣としてヴァイナルを使いながらセラートを使うんですが、セラートを効果的に使えるようにするために、自分自身に様々な制約を課すようにしているんです。たとえば、バーチャルなレコードバッグとして機能するソフトウェアの中に割りと少なめの選曲をしておきます。そうすれば万が一にも迷子になるようなことがありませんからね。

他にもセラートやトラクターの誘惑はあって、非常に精密な様式でDJにアプローチしてくるという点です。BPMによって、もしくはスタイルによってなど、とても容易に綿密にデジタル音楽を整えたり、選曲時のこれらの整頓機能に頼るようになりがちです。僕がDJすることで好きなことのひとつは、自然発生した直感的なアクションなんです。DJもお客も10分前には全く予期していなかったことが自然発生して、結果としてとてつもない瞬間が創造されることがあるんです。僕はヴァイナルを使ってDJすることは、僕にとってはそういった直感的な様式で作業を進めることが出来ます。

非常にシンプルな質問かもしれませんが、どのようなDJが素晴らしいと思いますか？

それは実は非常に難しい問題ですね。DJをするのに正しい方法や具体的に"素晴らしい"DJになる方法があるとは思っていません。とてもたくさんの素晴らしいDJが居るし、熟練するために多くの異なったアプローチがありますよね。DJとして特定のスタイルにこだわるのではなく、おそらく新しい音楽に対してや、オーディエンスに対してオープンマインドな姿勢を保とうとすることが大事だと思います。

最近ではUstream、Soundcloud、そしてYoutubeといった様々なストリーミングサイトを通じてクラブではなくてもDJをして、オンライン上で人々に聞いてもらうことが出来ますが、クラブでプレイするということはあなたにとってどんな意味を持ちますか？あなたにとってクラブでのプレイがどれくらい重要かを教えてください。

僕にとってクラブはものすごく重要です。僕がプレイしている音楽のほとんどが多くの人たちと一緒に大音量でサウンドシステムを通じて聞かれるために制作されているし、ダンスミュージックとして作られていない音楽をプレイしたとしても良い音のクラブでプレイすれば、より良く聞こえます。映像配信やセットを記録することは素晴らしいし、音楽を世界中の人々に届けることが出来るけれど、それは、周りに居る人たちと一緒にダイレクトに作用しあったり踊ったりしながら共通の環境で体験する音楽とは違いますね。

あなたはHessle Audioの運営者、またRinse FMでのラジオDJとしても知られていますが、もしレーベルを運営したり、Rinse FMなどラジオ番組を担当せず、DJ活動のみをしていたなら、あなたは今何をしていると思いますか？

もしラジオをやっていなかったら、フルタイムでDJ活動をしているってことはないと思います。僕たち(BenUFO、Pearson Sound、Pangaer)がレーベルを始めるって決心してなかったら、今何をしているのか全く分からないですね。そういったことについて真剣に考える必要がなかったので、僕はラッキーですね。

Hessle Audioでのあなたの担当は何でしょうか？レーベル内での役割について教えてください。

特にこれといった役割は無いんですが、僕ら3人はレーベル運営にからんだ業務を可能な限り平等に分担するようにしています。みんなでA&Rの過程に携わっているし、リリースしてきたもの全て、みんなで等しくお金を出し合っているものです。みんなの意見が一致しないレコードは一度もリリースしたことはありません。いわゆるビジネスとしてレーベルを運営していないんです。僕らは運がよくて、レーベルを頼って賃金を得ようとしていません。自由に必要なだけゆっくりとレーベルを動かしていて、定期的なスケジュールをこなそうというプレッシャーもありません。

これまでレーベルを運営してきていることの長所短所はなんでしょうか？

長所:
レーベルをやっていなければ問われないであろう音楽をリリースする能力。
レーベルの音楽を聴いている人の反応。
生活するために音楽をプレイしながら世界を旅する機会。
レーベルをやっていなければ出来なかった友人や出会うことのなかった膨大な数の人々。
人々が価値を見い出して深く味わえるような、願わくば記憶に残るような実物のモノを制作する喜び。

短所: 特に無し