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Machine love: Ikonika
Machine love: Ikonika

RAのRyan Keelingがウェストロンドンへ向かい、Hyperdubの主要アーティストの1人Ikonikaから制作環境などについて話を聞いた。

IkonikaことSara Abdel-Hamidは、UK内でダンスミュージックが活発に動きを見せた2008年、シーンに登場した。当時は00年代後半に起こるダブステップシーンの分裂の直前であり、ダブステップはまだひとつのシーンとしてまとまっていた。Kode9が率いるHyperdubは当時快進撃を続けていたが、8ビットサウンドと独特のメロディーがBPM140で疾走するIkonikaのごった煮サウンドはまさにレーベルにぴったりのサウンドだった。6枚のシングルをリリースした後、IkonikaはHyperdubからファーストアルバム『Contact, Love, Want, Have』をリリース。その間にはPlanet Muからのシングルのリリースや、自身のレーベルHum + Buzzを立ち上げている。

しかし、誰よりも多作だった2年程を過ごした後、彼女は突然制作をストップする。2011年は1枚もリリースせず、2012年もEP1枚だけに留まったIkonikaは、活動休止の理由を度々説明してきたが、それは単純に彼女の音楽的な趣向と制作手法の変化から来るものだった。ロンドンの他の仲間たちと同様、IkonikaはFruity Loopsで制作をスタートさせた。このソフトは簡単に音楽制作が出来るソフトとして知られているが、彼女は音楽の深淵へと進むため、Logicを使用することを選択。より洗練されたサウンドを求めていく(アルバムではFruity LoopsとLogicを併用した)。最近はハウスとテクノに興味を持っているIkonikaだが、昨年末にウェストロンドンにある彼女のスタジオを訪れた際は2枚目のアルバムの制作をしながら純粋に実験を楽しんでおり、変化の段階にあるように思えた。



Ikonika


2010年にアルバムのリリースや諸々のリリースを行った後、最近まで休んでいましたね。その理由は何だったのでしょう?

DJが忙しかったのと… あとは上手く言えないわ。まぁ自分の望み通りの楽曲が生み出せなかったというところね。ダブステップやUKファンキーにちょっと飽きていたから、もうそのシーンに関わらないようにしたかったのよ。リズムは退屈だし、メロディーも退屈だし、自分のサウンドにも飽きていたわ。というよりも、自分が8ビットのチップチューンサウンドのプロデューサーだって思われたくなかったのね。自分はまだまだ成長している段階だと思っているし、1つのジャンルに括られるべきじゃないと思うの。今はハードウェアを色々研究していて、ソフトをなるべく使わないようにしているのよ。また最初からやり直している感じね。

ということは、楽曲のリリースをやめたということですか?

その頃にHum & Buzzをスタートさせたから、そこに少し注力したのよ。あとはもっとクラブへ行って遊んだり、ダンスしたり、リズム物のトラックを沢山聴いたりする時間を作るようにしたわ。それでクラシックなハウスやテクノ、それにゲットー系にはまり出したの。多分Night Slagsの人たちが原因ね。いつも彼らと一緒に遊んだり、彼らのDJを聴いたりしていたから。私は「ワオ。こんな音楽今まで聴いたことがなかったわ」って感じだったのよ。

チップチューンの話が先ほど出ましたが、こういう音楽性は自然に自分の中から生まれたものだったのでしょうか?

アルバム『Contact, Love, Want, Have』の半分はLogic、残り半分はFruity Loopsで作ったの。サンプルとかは殆ど同じものを使っていたし、2007年から制作を始めたばかりだったから、色々難しかったの。それに私が使っていた機材には限界があったから、ボロボロのラップトップやブリープ音のサンプルを使って、とにかく持っているサウンドを使い切ろうとしたの。その結果ね。

Fruity Loopsのようなソフトを使うことには限界があると思いますか?

Fruity Loopsは面白いわ。シーケンサーは大好きだし、サンプラーの中のアルペジエーターも気に入っているの。でも私はもっと色々勉強したいと思っていたから、そういう勉強や研究、それにミックスダウンのレベルを上げるためにはLogicが最適だろうと思ったのよ。実際Logicはそういう面で助けてくれたと思うし、いわゆる洗練されたサウンドを生み出す助けにもなったと思うわ。

最近までの休止期間の間、自分の制作アプローチで変化した部分はありましたか?

ええ、Maschineを手に入れたのよ。MaschineのシーケンサーやステップシーケンサーはFruity Loopsを彷彿とさせるわね。Maschineを手に入れた理由は、自分のドラムトラックやリズムをもっと良くしたいと思ったからなの。というのは、それがUKファンキーの後に生じた問題だったと思うの。みんなが興奮するような新しいグルーヴが世の中になかったのよ。

最近グルーヴ的に大きな影響を受けているものは何でしょうか?

さっきも言ったけれど、クラシックハウスやLegowelt、Omar-S、Levon Vincentなどの作品を聴いているわ。彼らのシンプルだけどかなりヒプノティックなリズムが気に入っているの。私の初期の作品の中にはまとまりに欠けていて、せわしない作品があると思っているから、今は音数をもう少し削りたいと思っているのよ。

あなたはLevon Vincentよりもややピッチが速い楽曲を作っていると予想しますが。

そうね。初期の作品はBPM140位。そこから徐々に遅くなっているわ。今は大体BPM120から135位が気に入っているけれど、作品を作り始める時にBPMはそこまで意識していないの。

BPMはどうやって決めているのでしょう?

メトロノームで設定したテンポに慣れてしまうから、テンポを上げ下げしてみても結局最初のテンポが正しいと思う時があるの。だから基本的には最初のテンポに合わせていくけれど、その場その場で判断は変わるわ。

“I Make Lists” EPでは同じリードシンセを使っているので、EPを通じてある種のテーマのようなものが存在しているように思えます。

あのリードはソフトシンセね。Logicに入っているES2よ。トランシーなシンセサウンドよね。Dipset Trance Partyのコンピレーションやミックステープを沢山聴いていた時に良く分からないけれど、それが面白いなと思って。自分のトラックにユーモアを盛り込むのも好きだし。演奏していて楽しいシンセだし、私にとってリードシンセは楽しくて冗談めいていることが大事なのよ。



Ikonika


あなたはクラシックな音楽教育を受けたことがありますか?

基本的には感覚で作っているの。小さい頃にドラムのレッスンを受けただけよ。バンドに居た頃はリズムやブリッジ、ビートダウンなんかのパートを色々作曲していたけれど、ピアノのレッスンは一度も受けたことがないわ。将来受けてみたいと思っているけれどね。

基本的に制作のアイディアはリズムを軸に進めていくのでしょうか?

イエスでもありノーでもあるわ。基本的にはシンセを色々いじってみて、8小節のメロディーが出来たら、そこを中心に組み立てていくの。実はドラムから始めることはあまりないのよ。セカンドアルバムはビートレスなトラックも多いわ。ドラムを入れないで、メロディーだけでアレンジしてあるの。

制作で一番楽しいのは、色々機材をいじっている時間ね。シリアスに取り組まず、作らなきゃっていうプレッシャーも感じずに、ちょっといいなと思ったら少しずつレコーディングしていく感じが好きなのよ。“I Make Lists”はベースラインからスタートして、そこから組み上げていったわ。状況によりけりだけど、基本的にはメロディーが最初。それからアレンジ、ドラムって感じね。

EPのタイトル(I Make Lists)の話をしますが、あなたは病的な位、色々とリストアップするらしいですね。制作時でもそうなのでしょうか? 例えばルールを次から次へと設定してしまうような感じなのでしょうか?

そうなのよ。それが活動を休止した理由とも言えるわね。というのは自分の中にルールを作り過ぎちゃったのよ。例えば中域にベースラインを入れたら、サブベースをその下に入れなきゃいけないって感じね。キックのサブベースで補うなんて馬鹿げたことはできなかったのよ。あとは16小節のリードを作ったり、コーラスやフックを作ったりしなきゃいけないって思っていたわ。だからEPのタイトルは自分をからかう意味でつけたのよ。私はプライベートな部分も含め、基本的にきちっと整理しておきたい人間なのね。

ルールを適用していたのか、それとももはや癖になっていたのか、どちらだと思いますか?

自分がプロデューサーであること、実験的な音楽を生み出す人であることを忘れてしまうようなものね。こういう風にやらなければならない、例えば16小節ごとに何か変化を加えなければならないとか、そういうくだらないことに囚われていたのよ。でも徐々に自分の好きなようにやっていいんだってことに気付いてきたわ。

それでは、今のサウンドはどんな感じなのでしょうか?

みんながアルバム『Contact.…』のことを憶えていて、その方向に進んで欲しいって思っているから、セカンドアルバムは難しいわね。セカンドアルバムは奇妙なサウンドが沢山盛り込まれているけれど、せわしなかった昔のトラックよりもシンプルになっていると思うわ。

徐々に楽曲内のトラック数が減っていると思いますか?

そうね。(ディスプレイを指さして)このトラックはもうこれで終わりだけど、そんなにトラック数は多くないわ。

これは大体何トラック使用していますかね?

19トラックよ。

その前のトラック数はどれ位だったのでしょう?

オートメーションを使い出す前? 多分25トラック位だったかしら。あまり多くないと思うかも知れないけれど、オートメーションで負荷が減るのよ。

オートメーションは自分にとって新しいものだったのでしょうか?

ええ。Fruity Loopsを使っていた時はひたすら楽しかったの。何でもMIDIにアサインできたから。でもLogic 8はそういうMIDIに関してはちょっとダメね。リアルタイムのMIDIには向いていないわ。(ディスプレイ上のトラックのオートメーションを指さして)だからいつもこうやって全て書き込んじゃうの。ちょっとだけよ。聴いていて疲れてしまうようなサウンドにしないように、色々新しい方法を探っていくんだけど、大抵の場合は、どこかのキックを少しいじったりすることで解消されるわ。リバーブやピッチのオートメーションを書き込むのが好きね。ナイスなドロップを作れたり、雰囲気をビルドアップできたりするから。Logicのビルトインのプラグインがお気に入りよ。コンプレッサーやエフェクターが気に入っていて、外部のエフェクターは使っていないわ。

何故他のソフトではなくLogicを選んだのでしょうか?

基本的には成長したいと思ったからよ。多くの人が未だにFruity Loopsを使っているけれど、私は「もっとプロフェッショナルなサウンドが欲しいって思ったの。

Logic導入によってサウンドクオリティが良くなったと感じましたか?

今でもたまに思うんだけど、ドラムのサウンドは基本的にFruity Loopsの方が良いと感じるわね。サウンドがもっと太いっていうか。Logicだと何か手を加えなきゃならないというか、サウンドを重ねなければならない時もあるの。でも今はコンプレッションも理解しているし、Logicで問題ないわ。Fruity Loopsの時は、EQもコンプレッションも何もしなかったのよ。ただ音量だけを変化させていたの。でもLogicではもっと色々学べているし、自分から理解しようとしているのよ。私はスレッショルドやレシオなんてあんまり分かっていないし、技術的な部分でという意味ではないけれど、どうサウンドが鳴るべきかという部分で理解できるようになったから、満足しているわ。エンジニア的な使い方というよりは、エフェクターや楽器的な使い方というべきかしら。



Ikonika


ちょっと変わった形で自分の助けになったと?

色々実験するのは好きよ。楽しいから。制作は楽しくあるべきで、もし楽しくなかったらそれはクールなこととは言えないわ。ちょっと知らないことで、逆に色々なことが面白くなると思うの。でも、さっきルールの話をしたけれど、ルールが生まれてしまう可能性があるから、そうならないようにしているわ。

ミックスダウンは誰かの手を借りていますか?

Optimum(Malcom)ね。彼はHum & Buzzの運営も手伝ってくれているわ。彼が先にLogicを買って、私がアルバム『Contact…』を制作している時にLogicの特訓をしてくれたの。だから制作中に移行できたのよ。彼は色々YouTubeのビデオとかをチェックしてくれて、私に見せてくれたわ。私はマニュアルを読むのが嫌いなのよ。実践しながら憶えていくタイプだから、そういう理論の部分はどうでもいいのね。どう音が鳴って、どう感じるかということが大事なのよ。

演奏していて楽しい機材はどれでしょう?

最近はRoland TR707、それにTB303のエミュレーターxoxboxね。707はサウンドが好きだったから1年位前に買ったのよ。キックとクラップが気に入っているわ。クラップは909と一緒だと思うの。安いし楽しい感じがするし、サウンドは全部そこに入っているから色々いじる必要がなくて、音量だけを気にすればいいっていうのも気に入って買ったのよ。私はこの機材のシンプルなところと、グルーヴ、それに色とサイズに魅力を感じているわ。

そのサウンドを加工したりしますか?

ええ。Logicに取り込んで、コンプレッサーをかけると凄く良いキックのサウンドになるわ。色々試す時は、707とx0xb0xをシンクさせて鳴らして、アイディアを得ようとするの。この2台で一番気に入っている部分は、演奏にのめり込めるからメロディーやリードを考えないようになるところね。グルーヴを楽しむことができるし、飽きるまでループだけで色々試せるわ。そして飽きないループだと思ったらLogicに取り込むのよ。

通常ひとつのループに取り組んでいる時間はどれ位でしょう?

私がこの2台を気に入っているのは、簡単に良い音が鳴らせるという点なのよ。むしろ何かズルをしているようにさえ思うわ。というのは、どの音程なのか、テンポがどの程度なのかも把握しないままひたすら演奏するから。パソコンのディスプレイから取り組むのとは全く違うの。頭をからっぽにして何をしているのかも理解していない状態なのよ。

Yamaha PSS-680について教えてください。

Malcolmが買ったの。彼は自分が小さい頃に持っていたのを憶えていて、Googleで適当に検索したらMIDIがついていることが分かって、クールだってことになったのよ。埃っぽいし、歪んだ感じだからサウンドは全然良くないけれど、ポルタメントが面白いわ。パーカッションも入っていて、4つのバンクがあるけれど、サウンドはダメで感度も悪いから、叩きつけるように弾かなきゃいけないの。ビルトインのスピーカーも片方しかならないしね。でも20ポンドだったわ。Legoweltも最近手に入れたみたいで、彼のウェブサイトには、「クソみたいなYamahaを手に入れた。みんなは相手にしていないみたいだけれど、個人的には面白いしバカな機材だと思っているよ」って投稿されていたわ。

何かトラックに使いましたか?

Madonnaの “Dress You Up”のカバーで使ったけれど、全然聴こえないわ(笑)。

MoogのLittle Phattyはいつ手に入れたのでしょう?

Hyperdubから最初にもらったお金で買ったのよ。自分に何か投資しなきゃと思ったから、これを買ったの。丁度その頃Kode9がVoyagerを買っていたから、私もMoogが欲しいってジェラシーを感じたのね。アルバム『Contact…』では少し使っているわ。アルバムで使ったのはLittle PhattyとAlesisのMicronだけよ。Little Phattyのリードとベースが気に入っているの。私はモノシンセが好きなのよ。弾くと変なサウンドが鳴るから。



Ikonika


シンセサイザーにはどの程度詳しいのでしょうか?

Little Phattyはオシレーターが2基しかなくて簡単に扱えたからラッキーだったわね。パネルもシンプルで使いやすいし、フィルターも良いわ。でもシンセの中身がどうなっているのかは全然理解していないの。あまりオタクになりすぎないようにしているのよ。鍵盤が大きくてしっかりしていて、ウェイトもちゃんとあるから気に入っているわね。それまでは長年MIDIコントローラーを使っていたから。

以前テレビゲームの音楽が自分にある程度影響を与えていると言っていましたが、あなたはかなりのゲーマーなのでしょうか?

かなりとは言わないけれど、普通にゲームをしていたわよ。毎日メガドライブで遊んでいたの。ファーストアルバムを制作している時は、ゲームをしていた頃や、最初にガラージにハマった時にメガドライブで遊んでいたことを思い出していたわ。

そういうサウンドは意識的にアルバムに盛り込んだのでしょうか?

いいえ。Fruity Loopsで色々遊んでいる時に、サンプルパックの中にブリープ音が入っていて、それに凄く親しみを感じたのね。その後で、私はテレビゲームでずっと遊んでいたし、無意識のうちにそういうサウンドが自分の中にあったのかもと思ったのよ。自分が何かを作っていく中で、自分が何に影響を受けてきたのかを思い出させてくれる音楽のような存在って素敵だと思うわ。

音楽的に気に入っているゲームはありますか?

もちろん。「ベア・ナックル」(1991年メガドライブ)ね。凄くテクノでレイブ感溢れるサウンドだったって後で気が付いたわ。

そのゲームがどんなだったのか思い出せませんが、ビートが入っていたのでしょうか?

ストレートな4/4で、16ビットにコンバートされたローランドサウンドだったわ。どこかにシリーズ3作分全てのサウンドトラックをしまってあるはずだけれど、かなりいいわよ。

Words / Ryan Keeling
Translation / Tokuto Denda
Published / Friday, 25 January 2013


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