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Understanding filtering
RAのJono Buchananがフィルターの世界を分かりやすく解説する。
まずは簡単なクイズから始めましょう:こし器、スロットマシーン、低いトンネルに共通していることとは? こんな質問が一体音楽制作の何の役に立つのかと疑問に感じている人に向けて説明しますと、これら全ては、何かをある制約の条件下で通過させ、その条件に適していない場合は通過させないという特性を持っています。そしてこれらのひとつを具体的に頭の中にイメージすることが、フィルターの作用の理解に役立つはずです。フィルターとは、シンセサイザーに組み込まれたもの、または独立したエフェクトのプラグイン、またはEQのプラグインに組み込まれたもの、どれであろうと働きは一緒で、サウンドの特定の周波数スペクトルを聴こえるようにしながら、その他の周波数スペクトルをカットしたり、または極端に音量を下げたりする機能なのです。
しかし、フィルターの機能と使用方法をしっかりと理解するためには、まずは自分の耳こそがフィルターであるということを理解する必要があります。つまり世の中には一般的な人間の耳の可聴範囲よりも低い周波数帯域が存在すると共に、可聴範囲よりも高い周波数帯も存在しているのです。当然人間には個人差がありますし、実際成長していくことで、その可聴範囲も変化していきますが、一般的に人間の可聴範囲は低域で20Hz(ヘルツ=周波/秒)、そして高域では20000Hz(20kHz)と言われています。そして人間の耳はこのような幅広い周波数帯域をカバーしているので、地下鉄が遠くから駅に向かって走ってくるような低い音から、耳を切り裂くような高音までを聴くことが可能であり、これこそが低域、高域、そして中域と様々な周波数が組み合わさって生まれる音楽に私たちの耳が惹かれる理由なのです。
しかし、マルチトラックのレコーディング及びミキシングでは、可聴範囲内の周波数帯域でしっかりバランスを取らないと、上手くまとまったサウンドに聴こえないということに気づくと思います。ミックス内のサウンドに何か特別なキャラクターを加えたい場合は、EQを使って必要な調整を「加え」、その逆の場合、例えば高域がきつ過ぎる場合は、高域を「減らし」ます。このようなEQと同様、今回取り上げるフィルターもサウンドのトーンを調整するために存在しますが、EQとフィルターの間には基本的に異なる点がいくつか存在します。今回の記事では、その部分を説明すると同時に、フィルターの実用的な使用方法についても見ていきます。
まず始めに、EQには大抵の場合複数のバンド(帯域)が備わっています。これらは個別にカット、もしくはブーストさせることが可能です。簡単に言えば、単体のEQプラグインを使って、低域、中低域、中高域、高域それぞれのバンドを調整し、ブーストまたはカットすることで、そのバンドを強調することが可能なのです。
フィルターとは異なり、EQは一回で複数の周波数帯域のトーンを変化させることが可能です。
フィルターではこれは不可能です。フィルターでも変化させる周波数を任意に選択することは可能ですが、フィルターではその周波数以外の周波数のボリューム(音量)が小さくなります。この変化には大小の差がありますが、フィルターはボリュームをブーストさせるのではなく、その名が示す通り、不必要な周波数帯域をフィルタリング、またはカットして取り除くというのがEQとの大きな違いです。またもうひとつの大きな違いは、フィルターが変化させることが可能な周波数帯域はひとつだけだという点です。フィルターではひとつの周波数をフィルタリングがスタートする「ポイント」として指定し、そのポイント以外の周波数のボリュームを下げます。シンセサイザーやフィルターエフェクトを触ったことがある人ならばお分かりかと思いますが、このポイントはカットオフ周波数と呼ばれています。つまり、この周波数以外は劇的にボリュームがカットされる(下がる)のです。
殆どのフィルターエフェクトにはマルチモードが搭載されており、様々なフィルタータイプを選択することが可能です。その中で最もよく知られているフィルタータイプは、「ローパスフィルター」(LPF)で、その名の通りこのタイプは低域を通過させ、高域をカットします。ローパスフィルターを使用すると、サウンドはよりディープになり、暗く、こもった感じの効果を生みます。日常生活上でのローパスフィルターの例としては「壁」を挙げることが可能です。例えばクラブの外で並んでいる時を想像してみてください。この時に聴こえてくるのは低音のリズムだけです。つまり壁を越えるだけのエネルギーがあるのは、低域の周波数帯だけなのです。クラブのドアが開けばフィルターが一時的に外されたことになり、それよりも高い周波数のサウンドがあなたの耳に届くようになります。そしてドアが閉じればまた「壁」がローパスフィルターとして機能するという訳です。
この日常生活で感じることのできるフィルター効果は、フィルターをアウトプットチャンネルに通すことで再現することが可能です。フィルターを通すとミックス全体にエフェクトがかかるので、「壁」によって自然に生まれるフィルター効果と同じ効果を得ることになります。再現するにはまずフィルターをアウトプットチャンネルにインサートし、複数の機能が備わっているフィルタープラグインでローパスフィルターを選択、そしてカットオフ周波数を低目に設定しましょう。こうするとサウンドから明るさが取り除かれ、こもった低域だけが聴こえるようになります。またカットオフ周波数を上へ戻せば、再び高域の周波数帯が聴こえるようになり、下のサンプルで分かる通りミックスが明るくなります。
ミックス全体へのLPF:お聴きの通り、ミックスは最初全周波数帯で鳴っていますが、8小節目でローパスフィルターのカットオフ周波数が下がります。そして次の8小節でまた元に戻っていきます。
次に良く知られているフィルタータイプは、ハイパスフィルター(HPF)です。これはローパスフィルターの真逆です。ハイパスフィルターでも同様にカットオフ周波数を設定し、フィルタリングがスタートする位置を決めますが、ハイパスフィルターは低域の周波数帯を通すのではなく、高域の周波数帯を通すので、カットオフ周波数以下の周波数の音量が下がります。つまり、想像できると思いますが、聴こえるサウンドは非常に細くなり、特にカットオフ周波数がかなり高い位置で設定されている場合は中域と低域がカットされ、チリチリとした高域のサウンドだけが残ります。
ハイパスフィルターのサウンドがかなり(ローパスフィルターよりも更に)不自然に聴こえるのは、先ほどのサンプルにハイパスフィルターを使用した時、つまりミックス全体にハイパスフィルターをインサートした時にサウンドの倍音だけが残る状態になるからです。録音、または合成されたサウンドには、基本周波数とそれに付随する多くの倍音が含まれており、倍音は基本周波数より高域の方向へ伸びていきます。そして自然界では基本周波数抜きで高域の倍音だけを生み出すことは不可能ですが、ハイパスフィルターは基本周波数の音量を下げ、高域の倍音だけを残してしまうため、サウンドが不自然に聴こえるのです。ハイパスフィルターは自然界には存在しないサウンドを生み出すという意味で、非常にエキサイティングで、非現実的なフィルター効果をもたらす存在と言えるでしょう。そのサンプルを以下に示します。
ミックス全体へのHPF:今回はハイパスフィルターを使用します。オートメーションを見れば分かる通り、トラックの前半部分はフィルターがかかっている状態から一瞬元に戻り、またかかった後、中盤で低域がしっかりと聴こえるように元へ戻ります。
3番目によく知られているフィルタータイプは、バンドパスフィルター(BPF)です。これはカットオフ周波数を中心としたバンド(帯域)を設定することで、そのバンド内のサウンドを通過させ、それ以下の低域やそれ以上の高域をカットします。この例としては電話から聴こえるサウンドが挙げられます。電話の保留音を聴くと、音楽として最低限認識できるものになっているものの、低域と高域がかなり削られていることに気づくはずです。バンドパスフィルターの効果はローパスフィルターとハイパスフィルターを組み合わせることでも得ることが可能ですが、バンドパスフィルターを使えば、一度の設定で両フィルターの効果を同時に得ることが可能です。
ミックス全体へのBPF:ここでは先程と同じミックスに対しバンドパスフィルターをかけています。カットオフ周波数周辺の僅かな周波数帯だけを通すように設定してあるので、最初はハイパスフィルター、そして最後はローパスフィルターがかかっているように聴こえますが、このような狭い周波数帯を設定することが可能なのはバンドパスフィルターだけです。
さて、フィルタータイプの主要な3種類をミックス全体にインサートした時の効果を見てきましたが、勿論フィルターの使用方法はこれだけではありません。シンセサイザーでは主要な3つのセクション、オシレーター、フィルター、アンプで、ピッチ、トーン、ボリュームをコントロールします。つまりフィルターは個別のサウンドのトーンを決める際にも大きな役割を果たしているのです。シンセサイザーのフィルターセクションを見てみると、フィルタータイプを選択できるのと同時に、カットオフ周波数、そしてレゾナンスが備わっていることに気づくでしょう。そしてレゾナンスは「カットオフ周波数のボリュームをブーストさせる」時に使用します。
そう言われてもあまりピンと来ないという人は、次のように考えてみましょう。どのフィルタータイプであろうと、カットオフ周波数はスレッショルドのように機能し、その周波数から上(下)の周波数帯を通過させ、それ以外をカットするということは皆さんもう理解しているはずですが、要するにレゾナンスとはカットオフ周波数がどこに設定されていようとも、その周囲のボリュームをとにかく大きくする機能なのです。そしてこれもまた不自然なサウンドを生み出します。通常、基本周波数から遠ざかれば遠ざかるほど(高域に行けば行くほど)倍音のボリュームは小さくなりますが、ローパスフィルターのカットオフ周波数を高域に設定し、そこでレゾナンスを使えば、その部分のボリュームを劇的に大きくし、倍音を強調することが可能です。こうすることでサウンド自体のエッジが立ったような効果を得られます。下のサンプルで確かめてみましょう。
フィルタースウィープ:このサンプルではシンセサイザーのサウンドにローパスフィルターを通しています。カットオフ周波数は高域から低域へとスウィープしていきます。ここではレゾナンスは使用されていません。
フィルタースウィープ+レゾナンス40%:ここでは上と同じサウンドにレゾナンスを40%加えてみます。カットオフ周波数がブーストされているため、スウィープしていくサウンドが上のサンプルよりもエッジの効いた感じになっています。
フィルタースウィープ+レゾナンス65%:ここではレゾナンスを65%に設定しています。更にエッジが効いて明確なサウンドに聴こえるので、スウィープしていく様子が明確に理解できます。
またエンベロープもフィルターの動作に大きく関わってきます。エンベロープはパラメーターに時間軸の変化を与える機能なので、フィルターのエンベロープはサウンドのトーンに時間軸の変化を加えることになります。これまでに紹介したサンプルはカットオフ周波数をオートメーションで変化させて生み出したものですが、その変化は高域の周波数帯から低域へ移動するという「ランプ(傾斜)状」のため、エンベロープを使うことでもこのサウンドを簡単に作成することが可能です。殆どのシンセサイザーのエンベロープは、アタック、ディケイ、サスティン、リリースの4つの機能で構成されています。例えばアタックタイムはフェードイン、リリースはフェードアウトなど、エンベロープはボリュームに影響を与える存在として考えるのが普通ですが、今回はフィルターがテーマですので、エンベロープをボリュームに影響を与える機能として考えるのではなく、4つの機能によるカットオフの変化でトーンを変化させ、それによってサウンドの明暗に影響を与える機能として考えていきましょう。
これまでのサンプルでは、トーンの変化は直ぐに確認できますが、これはアタックタイムを短くすることで表現することが可能です。そして次の右肩下がりの傾斜はディケイタイムを調整することで表現しますが、これまでに挙げたサンプルの場合、ディケイタイムはかなり長く設定することになります。サスティンはディケイの後にカットオフポイントを変化させずに維持する長さを表現しますので、もしカットオフポイントが高域に設定されている場合は、カットオフがアタックからサスティンに移行する時の落差がなくなるため、ディケイの変化が生まれなくなります。そしてリリースタイムはサウンドのトーンがプレイされているノートがオフになってからどう変化するかを表現するため、ボリュームのエンベロープが大きく関わってきます。例えばフィルターのリリースタイムを長く設定している場合、プレイされているノートがオフになれば、サウンドのトーンも変化するはずだと考えるのが普通ですが、サウンドのボリュームのエンベロープのリリースタイムが非常に短く設定されている場合は、フィルターの変化が生じる前にサウンドが消滅してしまうため、変化を確認することができません。ですので、フィルターのリリースタイムを長く設定する場合は、ボリュームのエンベロープのリリースタイムも最低でもその時間と同じ長さに設定する必要があります。
EXS24のエンベロープのルーティング:下図では、エンベロープ1(ENV1)がフィルターのカットオフをコントロールするように設定されています。ADSRのフェーダーが最下部、どの機能をどこへアサインするというルーティング設定が中央、そしてレゾナンスなどが最上部に表示されています。
フィルターのエンベロープの設定の重要性は以下のサンプルをお聴きになれば理解できると思います。ここではベースサウンドがビートのループに合うように設定していきます。
強すぎるベース:このベースサウンドは、カットオフ周波数の設定値が高域過ぎるため、通過させる周波数帯が広範囲になっています。つまりベースサウンドに適しているとは言えません。
低すぎるベース:ここではカットオフポイントを低域に移動させたので、ローパスフィルターとして機能するようになっているものの、アタックが弱くなってしまっているため、ベースサウンドがはっきりと聴こえなくなっています。
明確なベース:ここではディケイタイムを少し短くしたエンベロープ(図のADSR2)を少しカットオフ周波数に加えています。これによってフィルターが各ノートのアタックを目立たせています。
面白いことに、フィルターのADSRは反転させても機能させることが可能です。通常ならばディケイからサスティンへは右肩下がりの傾斜になっており、ディケイは「アタックを強調する」機能を果たしていますが、エンベロープを反転させた場合は、ディケイはサスティンへ向かっていくような、右肩上がりの効果を生み出します。これによって、ベースは非常に静かなサブベースから明確なベースサウンドへと変化するため、同じタイミングで鳴るキックとベースの低域がぶつからなくなります。これはベースラインとキックを組み合わせる時に非常に効果的です。試行錯誤を多少繰り返せば、その変化をトラックのテンポに完ぺきに合わせられるようになるでしょう。
反転させたベース:ここではベースが発音時にカットオフ周波数へ向かって変化する効果を確認できます。これはフィルターのエンベロープのディケイでも設定することが可能ですが、ここではエンベロープを反転させています。サンプルの前半はベースサウンドのみで、後半はビートと組み合わせています。
LFOもフィルターの動作において非常に重要です。この効果はダブステップの震動するようなベースサウンドに良く使用されています。LFOはオシレーターの波形とスピードを他のサウンドに組み合わせる機能です。波のように上下動するサイン波をLFOとして使用すれば、フィルターのカットオフをその動きにシンクさせて動作させることが可能となり、サウンドのトーンは明るくなったり、暗くなったりを繰り返します。この効果を得るには、LFOの波形とスピードを選択した後、ルーティング先をフィルターのカットオフに設定します。
MorphoX のLFOのルーティング:カーソルの位置を確認すると、LFO1がフィルターのカットオフにルーティングされていることが確認できます。LFO1はキャプチャ画面の左側に確認できます。
LFOを使用したベース:このサンプルでは、ビートのテンポと同期させてあるLFOがフィルターのカットオフを変化させています。
LFOをかける量も非常に重要です。多すぎればトーンの変化が大きすぎてしまい、少なければその変化が殆ど確認できなくなりますが、テンポ同期が可能なプラグインシンセを使用していれば、トラックのテンポと変化のスピードが合うため、音楽的には成り立ちます。また、複数のスピードを使用してノートごとに違った効果を与えたい場合は、LFOスピードのオートメーションを書き込むか、もしくは同じサウンドで異なったLFOスピードを複数作成して編集するという方法があります。後者の場合、各トラック上で使いたい部分だけを残すことで、各ノートが異なったLFOスピードで鳴るひとつのトラックとして機能するようになります。
複数のLFOスピードのベース:同じサウンドで3トラック作成し、それぞれに異なったLFOスピードを設定します。そして好きなスピードの部分だけを残します。
また、フィルターのカットオフポイントを越えたサウンドのボリュームをどの程度極端に減衰させることができるのだろうかという点については、12dB/オクターブの設定を例に説明しましょう。この設定にしておくと、カットオフポイントより上の倍音のボリュームがオクターブごとに12dB小さくなることを意味します。つまり、より小さくしたい場合は、12dBよりも大きな数値を設定し、その減衰の程度を弱めたい場合は12dBよりも小さな数値を設定します。
EXS24のフィルタリングの強さ:Logicのフィルター、EXS24はローパスフィルターの強さを4段階で設定することが可能です(24dB、18dB、12dB、6dB/オクターブ)。またハイパスとバンドパスは12dBで固定されています。
尚、こういった処理をシンセサイザーのサウンド以外、例えばヴォーカルや録音した素材などにも適用するにはどうしたら良いのかと心配する必要はありません。DAW上のフィルタープラグインを使用することで全て再現できますし、実際最初の方で使用したサンプルはフィルタープラグイン(UADのMoog Filter)をミックスのアウトプットチャンネルにインサートすることで作成しています。パラメーターもシンセサイザーと同じで、複数のフィルターモード、カットオフとレゾナンス、そしてエンベロープとLFOが備わっています。ですので、自分の創作意欲の赴くままに、フィルターの素晴らしい世界を楽しんでください。
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Words /
Jono Buchanan
Translation /
Tokuto Denda
Published / Friday, 02 November 2012
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